
中野教授にとって、皇族の指導を受け持つのは初めてのことだった。
「はじめは緊張していました。しかし、敬宮さん自ら朗らかな空気をつくろうと冗談や世間話をされるので、他の学生と同じように指導することができました」
と中野教授は振り返る。
「先生わかっているのかな」と、ほほ笑む愛子さま
新型コロナ対策のため、大学3年生までの講義は主にオンラインだった。愛子さまはチャット機能で積極的にやり取りし、中野教授からの質問にも進んで答えていた。
受け持ったゼミの学生は13人だったが、「その中で一番、卒論について面談を重ねた学生かもしれない」と振り返る。
中野教授は、愛子さまを「おしゃべりが好きで、会話が弾む方」。中野教授が話題を振ると、間が開くことなく返事が返ってくるため、「会話のラリー」になるという。
面談をじっくり重ねたもうひとつの理由は、なにより愛子さまは論文や資料をじっくりと読み込むタイプだったことだ。
同じ分野で先に発表されている研究や資料があればそれを咀嚼し、自分の言葉で語ろうと努力されていたという。
こんなエピソードがある。
学習院大学では、講義を受けた学生がオンラインで教授や講師に感想などを送るシステムがある。「面白かった」とひとことだけ送る学生もあれば、学んだ感想やわからなかった点、質問を送る学生もいる。
中野教授の場合、締め切りは授業から2日後の23時59分。愛子さまはいつも締め切りギリギリに送ってくることが多かった。そして愛子さまは冗談めかして、こんな風に話していたという。
「私、返事が遅いんですよね。先生方わかっているのかな」
返事(講義の感想)が遅いのには理由があったと、中野教授は話す。
「敬宮さんは、なにを学び、どう感じたのかなど、時間ギリギリまで粘って丁寧なレポートを書いてくれました。学生から授業の手ごたえが戻ってくるのは嬉しいことです」