聶さんが受験勉強で使っていたテキスト(写真は聶さん提供)

“爆入学”は日本人にとって脅威なのか

 実は聶さんは、昨年4月に学習院大に合格している。留学ビザを取得するためにいったん入学したが、1年間大学の勉強と受験勉強を両立し、早稲田大に入り直した。なぜ仮面浪人という苦労をしてまで早稲田を目指したのか。

「学習院でも充実した研究はできると思いますが、もし研究者になる夢がかなわなかった場合、就職しなければなりません。日本の大手企業には学歴フィルターがあると聞くので、どんなフィルターでも突破できる大学に行ったほうがいいと思いました」

 日本国内には、聶さんのような高い学力とモチベーションを持った学生が中国から押し寄せる状況を脅威と捉える見方もある。有名大学の入学枠を中国人に奪われたら、日本人の学生がより合格しづらくなる……そのような懸念について、行知学園の楊代表は「視野が狭い」と一蹴する。

「そもそも、ほとんどの中国人学生は留学生枠で受験するので、日本人学生の入学枠が減ることはありません。入学後に優秀なライバルが増えるという意味で脅威に感じているなら、志が足りないように感じます。東大や京大レベルの学生はいずれ世界で戦うことになるのだから、早いうちから海外の研究者と切磋琢磨し、自分に足りないものと向き合ったほうがよいでしょう」

 中国の学生が受験に向き合う“熱量”の高さは、日本の受験生たちにも良い刺激を与えそうだ。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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