聶奕偉さん

「合格できなければ生きている価値がない」

 学力向上に一役買っているのが、中国の学校で行われている“超スパルタ教育”だ。行知学園の卒業生で、この春早稲田大学に入学する聶奕偉(じょう・えきい)さん(20)はこう話す。

「僕が通っていた高校では、朝6時半から夜10時半ごろまで授業や自習をする時間と決められていました。寮に入ると5分単位で生活のスケジュールを管理され、シャワーは週に1回、買い物や洗濯などができる自由時間は日曜日に4~5時間あるかどうかでした」

 寮生の間では「刑務所の囚人より僕たちのほうが不幸だ」というジョークがよく聞かれたという。

「『大学に合格できなければ生きている価値がない』とまで言う先生もいて、卒業後の同窓会では学校や先生の悪口で盛り上がるのが恒例です。僕の友人が通っていた進学校では、自殺防止のためにすべての窓に金属の網が設置されていたそうです。日本で中国のような教育を行ったら、人権侵害で憲法違反になると思います」(聶さん)

 中国には古くから「生まれは自分で決められないが、勉強すれば人生を変えられる」という価値観があり、スパルタ教育でも社会に受け入れられる土壌があるようだ。

 学生生活のあり方として、部活や学校行事など青春を楽しむゆとりがある日本のほうが「圧倒的に良い」と話す聶さん。日本の大学への留学を決めたのは、幼いころからアニメや書道を通じて日本に親しんできたことだけでなく、母国の政治事情の影響が大きいという。

「私は仏教哲学の研究者になりたいと思っているのですが、中国の大学で思想文化系の研究をする場合、国の指導者の意向と合わなければ政治的なプレッシャーを受けることがあります。研究の自由を確保するため、日本に行こうと思いました」

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