数千年もの歴史があるといわれる、人間と、ニワトリなど家禽との関係。
そのタマゴもさまざまに利用され、多彩な味わいの料理が作り出されてきました。
今回は、その中でも「ゆでタマゴ」に注目。
喫茶店のモーニング、お弁当に入ったスコッチエッグ……アレルギーなどをお持ちでないかぎり、きっと多くの方がこれまで数えきれないほどの「ゆでタマゴ」を食べてきたのではないでしょうか?
11月5日の「いいたまごの日」にちなんで、世界の「ゆでタマゴ料理」をご紹介します!

華やかな「デビルドエッグ」は、パーティー料理におすすめ
華やかな「デビルドエッグ」は、パーティー料理におすすめ

ゆでタマゴの「酢漬け」? マヨネーズがけ?

冒頭でもご紹介した「スコッチエッグ」。
ゆでタマゴをひき肉で包み、じっくりと油で揚げた、ボリューム満点の料理です。
その名前からスコットランド料理か? と思いきや、ロンドンで生まれた料理なのだそう。
同じく英国でゆでタマゴといえば「ピクルス」。
「酸っぱいゆでタマゴ?」と思ってしまいますが、冷蔵庫などがなかった時代に、スパイスやビネガーに漬けるのは、タマゴを保存する良い手段だったのかもしれません。
最近は「美容に良い」「疲労回復に効く」として、日本でも人気が高まっています。
パーティー料理として、アメリカやオーストラリアなどで定番の「デビルドエッグ」。
ゆでタマゴを半分に切り、卵黄の部分をいったん取り出して他の具材や調味料などと混ぜ、再び白身に盛りつける料理です。「スタッフドエッグ」と呼ばれることもありますね。
ちなみに「デビルド」とは「スパイシーな味つけをする」という意味。実際には辛いものに限らず、いろいろな味つけの「デビルドエッグ」のレシピが存在しています。
イタリアやフランス、スペインなどでも、もちろんゆでタマゴは食卓にのぼります。
フランスでは、ゆでタマゴにたっぷりのマヨネーズをかけたものが、手軽な前菜として人気。
「ゆでたタマゴの上に、タマゴでできたマヨネーズをかける」……タルタルソースや、たまごサンドの具と同じ発想ですが、なんだか不思議に思えてしまいます。

見た目もかわいいスコッチエッグ。盛りつけでさらに華やかに
見た目もかわいいスコッチエッグ。盛りつけでさらに華やかに

アジアでも、ゆでタマゴは大人気!

数千年前、養鶏が最初にはじまったとされる東南アジア。
今でも、トリ料理、タマゴ料理は人びとの間で大人気です。
もちろん、「ゆでタマゴ」も色々な料理に使われます。
肉類とともに煮込み料理にするほか、定番なのが「ゆでタマゴの素揚げ」。
野菜と取り合わせてサラダ風にしたり、他の具材とともにごはんに載せたり。
チリソースなどをかけて、崩しながら食べるととても美味しいですよ。
日本では「カレーにゆでタマゴをトッピングする」という方も多いですよね。
インドなど南アジアでは、ゆでタマゴをカレーに入れて煮込んだり、スパイシーな炒め物の具材にゆでタマゴを使ったりします。
中国や香港、台湾などで人気なのが「茶葉卵(茶葉蛋)」。
ゆでタマゴをお茶やスパイス、醤油などで煮たもので、独特の香ばしい味わいが魅力です。
特徴は、殻にひびを入れてから調理すること。白身の表面に、大理石のような模様がついているのはそのためです。

おいしそうに煮込まれた「茶葉卵」。殻に入ったひびにご注目!
おいしそうに煮込まれた「茶葉卵」。殻に入ったひびにご注目!

ゆでタマゴは、江戸時代のファストフード?

仏教の影響で、肉食が忌避された日本。
しかし安土桃山時代になると、中国から「医食同源」の思想が伝来し、タマゴの栄養が見直されるように。
さらに南蛮渡来のカステラなどにより、タマゴ食が徐々に広まりました。
江戸時代になるとタマゴは「万病に効く薬」として珍重されるように。
あちこちの街角で、「煮抜き卵」と呼ばれる固ゆでタマゴが売られるようになったのです。
今でも、地方によってはこの「煮抜き」という表現が残っているようですよ。
タマゴの難点は、割れやすいこと。ゆでてしまえば、その心配を減らすことができます。
手っ取り早い保存法だからこそ、「ゆでタマゴ」を使った料理が世界じゅうにあるのかもしれません。
もちろんゆでタマゴ以外にも、まだまだ世界にはたくさんのタマゴ料理が存在しています。
それは、また別の機会にご紹介しましょう!
参考:農山漁村文化協会編「地域食材大百科」
ダイアン・トゥーブス(村上彩訳)「タマゴの歴史」(原書房)
飯島奈美「セカイのきんぴら」(朝日新聞出版)