反転攻勢も失敗
2023年夏、ウクライナ軍はロシア軍が占領する南部・東部4州に「反転攻勢」をかけた。しかし、ロシア軍は多くの地雷を敷設し、前進を阻む塹壕を掘って対抗。逆に米国などからのF16戦闘機などの武器供与が間に合わなかったこともあり、結局反転攻勢は失敗に終わった。
2024年8月にはウクライナ軍は、想定で1万人強の兵員を動員して、ロシア政府のクルスク州を越境攻撃した。この戦争で初めてウクライナ軍がロシア領土を占領した。ウクライナは停戦交渉で「クルスク」を取引材料に使う可能性も指摘されている。しかし、戦況全体にそれほど大きい影響を与えることはなさそうだ。
これに対し、1万人を超す北朝鮮軍エリート部隊がクルスク州に配置された。ロシア領奪還に向けてウクライナ軍と戦うことになり、新たな問題が起きる恐れがある。
任期末が近付くバイデン米政権は2024年11月、ウクライナ軍が射程300キロの「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」をロシア領内に向けて発射することを初めて承認した。さっそく、同月25日にはクルスク州のロシア空軍基地に配備されているS400地対空迎撃ミサイルに対して発射され、命中した。こうした攻撃に対してプーチンは度々「核」の脅しで反応しており、戦闘はなお危険な状況が続いた。
トランプ再登場でプーチンはNATO崩壊に期待 だが、2024年の米大統領選挙でトランプが勝ち、政権に復帰。符丁(ふちょう)を合わせるかのようにロシア軍はウクライナ攻撃を激化させた。
そしてトランプは「1日で解決する」と言っていたウクライナの戦争を「6カ月」に遅らせた。この発言は明らかにロシアの攻撃長期化を示唆している。
同時にトランプはグリーンランドを領有化し、カナダを「米国の51番目の州」にする要求を始めた。いずれもNATO同盟国が絡んでおり、NATO分断につながる恐れがある動きだ。その場合、NATOのウクライナ支援は大きく後退する。
そうなればプーチンにとっては願ってもないチャンスが到来し、ゼレンスキー政権打倒の可能性が出てくる、と読んでいるかもしれない。情勢激変の行方をしっかり見守る必要がある。