
侵攻前に「五分五分」の予測も
2021年9月には、NATOの「平和のためのパートナーシップ」演習が行われ、米国が支援し、十数カ国から約6000人の兵士が参加した。
ウクライナ国境を包囲するロシア軍が増強された11月から年末にかけては、約88トンの弾薬、ジャベリン発射台30基、同ミサイル180基が急きょ運び込まれた。さらに150人以上の米軍事顧問団などが常駐してウクライナ軍の訓練に当たった。
米国の対ウクライナ軍事援助額は、米議会調査局(CRS)などによると、2014~22年6月まで73億ドル(現在の為替レートで約1兆1000億円)、ロシア軍侵攻後の2022~24会計年度の援助額1742億ドル(同約26兆円)に上った。
こうした状況から、外交誌『フォーリン・ポリシー』電子版はロシア軍のウクライナ侵攻前、「一方的勝利というより五分五分」と予測。「ロシアが早期勝利を得る戦争にはならない」とのアンドリー・ザゴロドニューク元ウクライナ国防相の見方も伝えていた。
戦況は総体的に膠着状態
戦争は多くの不幸をもたらす。特に苦しんでいるのはウクライナ国民だ。2024年現在で、ウクライナ国民の国内難民は800万人、海外難民は820万人に達している。戦争前の総人口は約4500万人だから、約35%の人々が自宅で家族と一緒に暮らすことができない状態だ。
しかし、戦況は総体的に膠着状態に陥っている。
ロシア政府は2022年9月、ドネツク、ルハンスクの東部2州とヘルソン、ザポリージャの南部2州の併合を発表した。ロシア系住民が多いとされるこれらの州だが、形だけロシアに帰属させても、実態は変わらない。
ロシア軍は同月、欧州最大のザポリージャ原子力発電所に対して攻撃し、占領した。国際原子力機関(IAEA)は危険だと警告したが、ロシア側は事実上無視している。
同年10月にウクライナ特殊部隊はクリミア大橋を爆破させた。クリミアから前線へ武器・弾薬や兵站の物資を輸送できなくなると深刻な影響が予測されたが、結果的にみて、戦争全体にそれほどの影響を与えることはなかった。
この戦争はさまざまなことが起きる。2023年6月には、ヘルソン州のダムが決壊して洪水となり、騒がれたが、誰が何のために実行したのか分からないままだ。