
――映画は前後編で、恋に将来に悩みながら家族や友人に支えられて成長する麗奈の姿を描く。
Koki,:私はどうしても考えすぎて頭でっかちになってしまったり、自分の中にため込んでしまったりする癖がある。そういうときは家族に相談するようにしています。特に姉と私は全く考え方が違うので、悩みを相談すると「そんなの気にしなくていいよ」と言ってくれたりして、自分を強くしてもらえるんです。
Kucci:私もけっこう悩みやすい体質です。でもうちは母が「人生一度きり!」という前向きで明るいマインドの人で、いまも新しい場所で新しい仕事にチャレンジしている。そういう背中を見てきたので、その影響が大きいです。音楽を始めたのも両親が小1の時にピアノを買ってくれたことがはじまりなんです。
Koki,:私が俳優の道を選んだのも父の背中を見て育ったことが大きいです。一度だけ撮影現場に行かせてもらったとき、自分の父なのにまるっきり違う人になっていく様子やスイッチが入って演技に集中している姿がすごくかっこよかった。ドラマや映画で見る人の気持ちを動かしたり、何かを伝えたりできる俳優って素晴らしいなと思い、そこから演じることにずっと憧れを抱いてきました。
人の心の隙間にふっと
――映画には「なりたい自分になることを諦めない」というメッセージも込められている。Koki,さんは英語力を生かして海外作品にも出演。Kucciさんは昨年4カ月間、タイに留学した。
Koki,:タイに留学って、すごくかっこいいですね!
Kucci:最初はタイの料理や雑貨が好きでタイに興味を持ったのですが言葉や音楽もおもしろいんです。タイ語は難しいけど挑戦しがいがあります。
Koki,:海外に出るとさまざまな文化や人に触れ合えて学ぶことが本当に多いですよね。自分と背景が違う人たちと出会うと、自分の視野を広く持つことの大切さを実感できる。私は映画のなかで麗奈が言う「なりたい自分になることを諦めない」という言葉を自分に言い聞かせています。人って悩み事や迷いがあるとどうしてもやりたいことを諦めてしまったり、「今じゃなくていいかな」とか後回しにしてしまったりしますよね。でもやっぱり目標に向かってがんばっているときが一番輝いているし、それ自体が学びになり、成長になっている。これからも見てくださる方に何かメッセージを残せるような表現者になりたいなと思います。
Kucci:私は「なりたい自分になるために」決めていることが二つあります。まず自分にうそをつかず正直にいること。表現を届ける側の責任だと思っています。二つめは挑戦し続けること。タイ留学も不安がありましたが、挑戦した先にいま得ているものがある。その気持ちを持ち続けて、音楽を通して人の心の隙間にふっと入って気持ちを上げられるような、そんなアーティストになりたいです。
(フリーランス記者・中村千晶)

※AERA 2025年3月17日号

