【Preferred Robotics】CTO:寺田耕志(てらだ・こうじ)/1979年生まれ。2008年東京大学情報理工学系研究科知能機械情報学専攻博士課程修了後、トヨタ自動車に入社。パートナーロボット部で生活支援ロボットの開発に携わる。19年Preferred Networksに転職し、ロボット実用化の開発を続け現職(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年3月17日号にはPreferred Robotics CTO 寺田耕志さんが登場した。

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 Preferred Roboticsが開発した自律搬送ロボット「カチャカ」は、2024年第11回ロボット大賞総務大臣賞を受賞。企画、開発のリーダーとして研究を進め、商品化にこぎつけた。

 カチャカは、最新AI(人工知能)を搭載した、物を運んでくれるロボットだ。専用の棚に必要な物を入れておけば、声をかけるだけで事前に設定した場所に届けてくれる。

 例えば、赤ちゃんを育てている家庭の場合、「おむつをソファに持ってきて」と話しかけると、おむつが収納された棚を載せて、持ってきてくれる。おむつを替えている最中に、ゴミ箱をお願いすると、ゴミ箱がある別の棚に載せ替えて、運んできてくれる。

 1人でマルチタスクがこなせる利便性と手の届く価格帯で、工場、飲食店、病院など幅広い業種でも利用されている。

 小学生の時からロボットをつくり始め、人の役に立つ実用化ロボットを開発できる仕事に就いた。いまの会社に転職した当時は、メイドのようにあらゆる家事をこなす、腕が付いたロボットを開発していた。しかし思ったように進まず、完成したとしても高額になることも悩みだった。

 ある日突然、腕がなくても物を運んでくれるだけで人の助けになるのではと思い、3カ月余りで基礎技術を構築。2年半かけて商品化した。

 コロナ禍に自宅での開発を強いられたことも功を奏した。家庭環境の違いで生じる障害は多様だ。段差がある、が乗っかってくる、床に油が落ちているなど、実験室にこもっていては分からなかったことだらけだった。

「実際に使う人、使われる現場を見ながら開発することを徹底しています」

 大勢が行き交う病院では、急な飛び出しなどの障害物を検知、回避しながら、100メートル先の病室に物を届け、職員の移動時間の削減に。物流倉庫では、1機で何台もの台車を管理し、幅5・5センチの動線でも安全に走行し、運搬の負担を減らせる。

 高齢者でも簡単に操作ができるよう、スマホと連携させ、ソフトも常に改善している。

 競争が激しいAI市場だが、ロボットまで作れる企業はまだ少ないという。夢は誰もが使えるAIを導入した実用化ロボットで世界トップランナーとして走り続け、エジソンのような会社にすることだ。(ライター・米澤伸子)

AERA 2025年3月17日号

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