作家 今村翔吾さん(いまむら・しょうご)/1984年、京都府生まれ。滋賀県在住。ダンスインストラクター、作曲家などを経て作家に。2022年、『塞王の楯』で第166回直木賞受賞。21年11月からは書店経営も行う(撮影:写真映像部・松永卓也)

在庫管理や販売管理、書店業はシステムが大切

──紀伊國屋書店は2027年に100周年を迎えます。

高井:創業者の田辺茂一(たなべもいち)は、ビルを建てる際に本屋だけではなく劇場(紀伊國屋ホール)をつくった。ここを文化の発信拠点にするというビジョンがありました。田辺はダジャレが大好きで、このビルは「鉄筋コンクリートではなくて借金コンクリート」なんて言っていました(笑)。

今村:紀伊國屋書店さんの10分の1ですが、僕も2027年に10周年です(笑)。まったく規模が違いますが、たぶん作家の中で一番借金していると思うんです。事業のローンですから、ずばぬけていると思いますよ。自分でファイナンス全部やっていますから。

 22年に直木賞を受賞した後に47都道府県の本屋さんや図書館など275カ所をめぐりました。本屋は利益を改善するために、「なんでもいいからくっつけてしまえ」っていう流れになっているように見えるんですね。半分カフェ、半分で本屋ならいいんですけど、このままじゃカフェ9割、本屋1割とか出てくるだろうなと。最近、フィットネスジムと本屋なんていうのもある。こういうのは悪くはないんですけど、くっつけられるものをあまり遠くの他人じゃなく、できる限り親戚とくっつけられないかなと思っています。

 だから昨年オープンした「ほんまる」というシェア書店は、ある意味で旗艦店です。今後はほんまるで機能を作ってブラッシュアップして、地方に展開していこうとしている途中です。地方でもフリーペーパーとかを毎月3万枚流しているというような中小企業さんがいっぱいあるので、そういう意味では自分のところのブランディングのためにうちに棚を持ってもらう。それによって、書店の家賃分ぐらいは賄いつつ、本屋として戦っていくっていうのが次に描いている戦略のひとつです。そうしないと雑誌も入れられないし、地方の本屋を救うことにはやっぱりならないと思うので。

高井:書店業っていうのは、システムがやはり非常に大切で、在庫管理にしても販売管理にしてもPOSシステムにしても、そこにお金がかかります。うちは、社内に情報システムの開発部署があります。そこで紀伊國屋パブラインや電子書籍などのサービスを開発できるのです。システムへの投資ができないと、今の時代は本屋さんを続けていくのは大変だろうなと思います。

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本を売り、動画も発信、作家自身が宣伝活動もやる