トランプ大統領/アフロ
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、2月28日(現地)で”口論”に発展した、アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談について。

【写真】トランプ&バンスVS.ゼレンスキーは「男のメンツの張り合い」の愚行 あの3人が女だったなら 北原みのり

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 3月8日は国際女性デー。今年は、1975年に「国際女性デー」が制定されてから50年という節目の年であるけれど、この世界はまだまだまだまだ男のもの……と思い知らされるような、トランプ&バンスVSゼレンスキーの「プロレス」だった。

 人々の命がかかった深刻な対立をプロレスにたとえるな、とお叱りを受けるかもしれない、あるいはプロレスを「あんなケンカ」にたとえるなというお叱りもあるかもしれないが、「観客」を十分に意識したファイティングポーズを「見せられている」感を含め、3人がそれぞれに極限的な「男らしさ」を発揮しているように私には見えた。その「男らしさ」とは、プロレスのリング上や、任侠映画であれば楽しめるといった類いの純度の高い「男らしさ」である。そんなものが重要な国際的な対話の場でもダダ漏れするくらいの世界に、私たちはまだ生きているのだ。

 この「事件」が起きたアメリカ大統領執務室での対話を、最初から何度も観た。

 多くの人がこの件についてコメントしているが、「ウクライナのゼレンスキーは冷静だった」と称賛する人もいれば、一貫性を保つトランプの姿勢に共感する人もいる。政治的な立ち位置によって「事件」の見え方が変わるのかもしれないが、もしあそこにドイツのメルケルさんがいたら……いや、メルケルさんじゃなくたっていい、もしあの3人が女だったら……こんなことにはならなかったよねと思わずにはいられないのは、私が女だからなのだろう。どう見てもあれは、「男のメンツの張り合いという愚行」としか説明がつかない。

 きっかけは、バンスの発言だった。

「たぶん、外交っていうのが、最良の答えだよね、だからトランプ大統領は外交をしようとしているんだよね」

 意訳すればそんなフツーのことをバンスは言った。そこでゼレンスキーが、は? と切れた、ように私には見えた。

「あ? じゃあ、聞くけど、オメーの言う外交って何よ?」

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