
周りにイエスマンしかいなかったら人は天狗になってしまう。人が強く生きるためには多少のNOは必要で、そのNOに打ち勝つ力を自分で身につけなければいけない。最近の“怒らない文化”に対して「これでいいの?」と思うところがあります。
怒ることはエネルギーが必要です。私が「No No Girls」で一番難しかったのも「怒ること」でした。今の社会に必要なのは“おかんバイブス”だと思っています。おかんって、こっちのために怒ってくれている雰囲気を出すのがすごく上手なんです。
今は無関心な方が無難な世の中です。例えば電車で一人で泣いている高校生ぐらいの女の子に対して声をかける人は今の社会にどれだけいるか。ちょっとお節介なおかんバイブスを持っている人は「あんたどうしたの? 何かあったの?」というふうに話しかける。そういう温かさがもう少しあれば「人っていいな」と思える人が増えると思っています。
世にもっと“ババア”を
私は夫が韓国人なので、出産前に韓国と日本を何度も行き来していたのですが、おなかが大きくなるにつれて一人で荷物を持ち運ぶことが大変になっていきました。そんな時にいつも手伝ってくれたのが通りすがりの50~60代ぐらいの女性でした。もっと上の世代の女性が手伝ってくれたこともあります。一緒にいらっしゃった旦那さんは「大変そうだね」と傍観する雰囲気でも奥さんが私に駆け寄ってくれて、旦那さんに向かって「あんたも手伝いなさいよ!」と言ってくれた。あの時助けてくれたおかんたちにすごく感謝しています。
あと、“ババア”って悪い言葉に聞こえますが、私はすごく好きな言葉なんです。強いエネルギーがある人がババアだと思っていて、HANAのメンバーも含めて「No No Girls」の子たちにとって私はババアだと思います。最近はあまりエネルギーを消費しないように、相手や自分を守るために思っている意見が強くあっても怒らずぐっとこらえることを繰り返して結局自滅してしまうことも多い。でもババア精神を持っていると、理不尽なことを言われても「こんなことできるわけないじゃない! よく考えてみなさいよ!」って怒ることができる。エネルギーを持っている人を見ると元気がもらえるじゃないですか。だから「世にもっとババアを」と思っています(笑)。
(構成/ライター・小松香里)
※AERA 2025年3月10日号より抜粋

