ゆるぎないマナーもあるが、場面によって正解が変わるなどの面もあるとマナー講師の諏内えみさんは語る(写真:iStock / Getty Images Plus)
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 誰もが一度は耳にしたことがある不思議なマナー。こういった「謎マナー」が日々更新され、加速しているという。背景を探った。 AERA2025年3月10日号より。

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「謎マナー」という言葉が、たびたび話題になる。まことしやかに語られ、場合によっては社会に根付いているものの、根拠がはっきりしない不思議なお作法のことだ。「徳利の注ぎ口を使って注いではいけない」「ビールを注ぐときはラベルを上に」「『了解しました』は失礼」など、多くの人が一度は聞いたことがあるだろう。そして、こうした不思議なマナーは日々新たに誕生している。

マスクの選び方まで

 今年1月には、テレビのバラエティー番組に出演した有名マナー講師が「カレーを置く際は、利き腕のほうにライス、その逆にルーが来るように」と提唱し、大きな話題になった。お皿をルーで汚さずにキレイに食べられるため、と根拠は述べられており納得できる面はあるものの、「こじつけ」「カレーにマナーを押し付ける方がマナー違反」などとSNSでは徹底的にやり玉に挙げられた。また、コロナ禍のさなかには、ビジネスシーンでのマスクの選び方からオンライン会議の作法まで次々に新たな「マナー」が提案され、そのたびに議論を呼んだ。

 なかには、SNS上の冗談が広まったケースもある。「渋沢栄一は不貞を連想させるため、新1万円札はご祝儀には不適」という嘘マナーがそれだ。新紙幣が発行される前からSNS上に複数の投稿が確認できる。その後、2024年7月に架空のマナー講師の発言としてXに投稿されたものがバズり、「ネタ」が発端と明記せずに話題として取り上げるネット記事が複数出て本当に信じる人が現れた。

 こうした騒動の背景にあるのは、社会の根強い「マナー需要」だろう。「やっぱりみんなマナーが好き」と語るのは、ビジネス誌「PRESIDENT」の星野貴彦編集長だ。同誌では去年9月、「恥をかかない大人のマナー」と題した大特集を実施、「ほかの号に比べてもよく売れた」(星野さん)という。

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