イラスト:サヲリブラウン
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 先週号で書いた新しいスマートフォンのセルフ移行、やはり難儀しました!

 正確に記すと、データ移行自体は拍子抜けするほどあっさり終了。その後60個以上あるすべてのアプリに再ログインするのに4時間以上かかりました。パスワード入力だの2段階認証だの一気にやってしまわないと翌日から不便なので頑張りましたが、もう二度とスマホは変えたくない!と疲労困憊するほど。

 とは言うものの、スマホは耐久消費財で、何年かに一度の機種変更は確実にやってくる。あと2回くらいは自分でなんとかなるかもしれないけれど、知力、気力、体力、すべてにおいて、それ以降は自分でどこまでできるかと少し不安になりました。

 テクノロジーの進化によって生活は便利になり、やがてテクノロジーに頼らないと生活が滞る時代がやってきて、そのあと「特別な知識がなくとも使えるまでに進化したテクノロジーがプロの代わりを務める」時代が到来したと感じています。ここ10年は特にそう。オペレーターに電話をつなぐことなく、チャットボットと会話して問題を解決したり、スマホのデータ移行やアプリの管理を自分で行ったり。テクノロジーの進化のおかげで企業は人件費を削減できますが、消費者である人間はどんどん老いていくわけで、たゆまぬ努力なくしてはついていくのが難しくなる。

イラスト:サヲリブラウン

 この側面だけを見れば、消費者の行動は原始時代に戻りつつあるようにも感じます。自分で苗を植えて収穫し、自分で狩猟し、自分の生活を自分で支えていた時代と、ある意味行動様式は同じだもの。それができなくなったら命にかかわる原始時代!

 物々交換が商売の起源で、その次が、誰かにやってもらう代わりに対価を払うフェイズだと理解しています。どんどん便利になった先に、また変わっていくのでしょうか。

 一方で、自分で調理ができなくてもコンビニに行けばなんでもある時代でもあります。最近はシニア層にも受けのよい商品がたくさん並んでいるので、こちらは心配なさそう。

 今後は、ウェアラブルデバイスを使った健康管理の分野がどんどん発展していく予感がします。私が老人になる頃は、病院に行かずともデータを送信して診断が出るのだろうな。端末に不具合が出たらどうするんだろう。自力解決が求められるのだろうなあ。いやあ、頑張らなくちゃ!

AERA 2025年3月10日号

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