
自宅から朝9時にアルタへ直行し、まずはタモリさんやレギュラー陣と打ち合わせ、リハーサル。番組が終わるとタモリさんを交えた反省会が30分前後行われ、その後、当日のゲストらを誘い館内のカフェ「ぶどうの木」で少し遅いランチを食べるのが定番だったという。
「スタジオはすごく狭かったですよ。通販番組のこぢんまりしたセット並み。タモリさんの控え室でさえ2畳ほどしかありません」(小林さん)
スタジオの狭さが生んだ熱気、勢い
手元の資料によると、スタジオは約250平方メートルの広さ。天井の高さはテレビ局内だと10メートルを超えるのは珍しくないが、わずか4メートル弱。ここに観客が150人ほど座り、コーナーごとの大道具や小道具がひしめき合っていた。
「でも、それが結果として良かったんじゃないかなあ。タモリさんら出演者とお客さん、僕ら制作側との親近感を高め、番組の熱気というか勢いを演出できたように思います」(同)
全8054回放送の番組平均視聴率は11.5%。最高視聴率は1988年4月29日の27.9%(関東地区。ビデオリサーチ調べ)。平均視聴率は、他局の同時間帯の視聴率が残っている89年以降では、25年連続で年間視聴率のトップとなる数字だ。今では考えられない“お化け番組”だったことをあらためて知らされる。
小林さんが最後にアルタに行ったのは、昨年6月ごろだという。
「原宿に行った帰りにたまたま新宿に立ち寄り、20年とか30年ぶりにビルを見上げてきました。周囲の店や看板、ビルがすっかり変わってしまい、まるで浦島太郎の気分でしたよ(笑)」

アイドル歌手デビューで映し出されて
アルタがオープンした80年にアイドル歌手としてデビューした原めぐみさんも、アルタに強い思いがあるひとりだ。
「アルタビジョン」にデビュー曲のミュージックビデオ(MV)が映し出されたときの思いをこう語る。
「デビュー曲の『ボーイハント』(トリオレコード)は80年11月のリリースで、MVはアルタ用に東京の郊外で撮影したんです。あんな大きな画面全体に私が映し出されたのを見た時の感動とうれしさは、今も忘れられないですね」