科学トレーニングの時代にも対応

 久保コーチが指導を続ける年月の間に、投手コーチの仕事は大きく変わった。「ラプソード」という測定・分析機器で、投げる球の回転数、回転軸、スピン量などが細かく数値を計測できるようになり、コーチが現役時代の経験則だけで選手を指導するのが通用しない時代になった。データを照らし合わせた上で、パフォーマンスを上げるためにどうすればいいか。多角的な角度で個々の選手の才能を引き出す手腕が求められる。

 在京球団のコーチは「科学的トレーニングの発達で150キロ以上を投げる投手がゴロゴロ出てきている。指導に当たる際はこちらも知識をアップデートしなければいけない。正直、自分の伝えたアドバイスが正しかったのか悩む時があります。30年近く指導にあたって、多くの投手の才能を引き続けている久保さんは、本当にすごい」と尊敬の念を口にする。

 前出の阪神OBは「フォーム改造は時間が掛かるので、田中が完全復活するのは来年になるのではないでしょうか。久保コーチも仕上がり具合を見ながら色々考えると思います」と言う。

 田中がどのように復活していくか。66歳の名伯楽の手腕が注目される。

(今川秀悟)

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