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マウンドを降りて、女房役の甲斐拓也と笑顔を交わす。こんな表情を見るのは久しぶりだ。楽天を退団して巨人に新加入した田中将大が、移籍後初の対外試合登板となった2月24日のロッテ戦で1回を無安打無失点に抑えた。直球は最速145キロを計測した。
「投球フォームを変えてまだ試行錯誤の段階だと思いますが、直球の力強さは明らかに上がっている。開幕前には150キロ近くまで上がってくるでしょう」(スポーツ紙デスク)
田中は右肘のクリーニング手術明けの昨年は1試合のみの登板。日米通算200勝にあと3勝に迫っているが、プロ18年目で初の1軍未勝利に終わった。昨年オフに楽天を電撃退団。獲得に動いた巨人・阿部慎之助監督が右腕の復活を託したのが、久保康生巡回投手コーチだった。
久保コーチはキャンプ初日から二人三脚で田中の指導に当たった。マウンドの傾斜を逆に使い、登り坂に立った状態から投球練習をしたり、2個のボールを同時に投げたりするユニークな練習法にメディアの注目が集まった。久保コーチの指導を受けて、マウンド上の田中のフォームは明らかに変わった。昨年は肘が下がり、右腕が横振りになっている印象だったが、「縦振り」の投球フォームで、球の強度が上がっている。まだまだ調整段階だろうが、大きな光が見えていることは田中の笑顔が示している。
最多勝の菅野は「久保コーチとの出会いが大きい」
昨年、巨人は、菅野智之(現オリオールズ)が15勝をマークして最多勝、MVPに輝く活躍を見せ、4年ぶりのV奪回を果たした。菅野はその前年の23年には、4勝8敗と自己ワーストの成績に終わり、限界説がささやかれていた。菅野の復活をサポートしたのが、久保コーチだった。菅野は昨年12月に「NPBアワーズ」に出席した際、「(好成績は)色々な要因があると思いますけど、1つは久保コーチとの出会いが大きかったです。久保コーチと会っていなかったらここにいないです」と感謝の思いを口にした。