CEOも、従業員と同じテーブルで働く(撮影/加藤夏子)
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 何のために出社するのか? 在宅勤務が減っていく中、従業員がオフィスで快適に働ける環境が求められている。そこで【前編】では、IT企業のMIXIが行ったオフィス改革について取材。渋谷スクランブルスクエアにオフィスを構える同社は、全席にアーロンデスクと昇降デスクを配備するなどの環境づくりを行っていた。【後編】では、「社長室をなくした」というMIXIと同じ決断をした企業を取材。両社に共通する「戦略」とは――。

【写真】「出社回帰」のなか、従業員が快適に働けるようにアップデートされたオフィスはこちら

※【前編】<「家と同レベルなら出社のメリットがない」 オフィス全席に高級家具、MIXIの「モンスト」ヒット時の反省とは>より続く

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会長自ら「この部屋、要らない」

MIXIの執務フロアはどのフロアもほぼ同じ設計で作られているという(提供/MIXI)

 従業員には、昇降デスクとアーロンチェアが基本セット。席数が従業員数よりも圧倒的に多い。そんな充実した環境を提供するMIXIだが、執務エリアを見ていて気になったことがある。前述の通り、どの階のどの席もほぼ同じスペック……ということは、社長室などはどのようになっているのだろうか? 同社の嵯峨勇さん(はたらく環境推進本部せいかつ環境室マネージャー)はこう話す。

「社長室などはないですね。従業員と同じデスク環境で仕事をしています。出社時はオンラインミーティングも多いので、社内の会議室をひと部屋使っていることも多いですね。ほかの役員にも、特別な部屋は一切ありません。新入社員も契約社員も社長も取締役も、みんな同じ席です。かなりフラットな関係だと思います。

 ここに移転する前には会長室もあったのですが、笠原(当時会長。現取締役ファウンダー)が『この部屋、要らないから何かで使ってよ』と言って撮影のスタジオに改修するなど、自ら手放したんです。その姿勢が全役員に波及していきました」

 大企業なのに社長室がない? そんな企業があるのだろうか。

 同じ例があった。IT・製造企業のパナソニック コネクトは、東京・汐留のオフィスに約1700人が働いている。2017年、拠点オフィスを大阪から、顧客が集中する東京に移した。

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役員席は「フロアの真ん中」