総務にオフィスを見学させた
樋口CEOは大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。その後、ボストンコンサルティンググループ、アップルなどを経て、日本ヒューレット・パッカード、ダイエー、マイクロソフトで経営を経験し、パナソニックに戻ったという経歴をもつ。
こうした背景もあり、オフィスの移転に際しては、総務関連の従業員にマイクロソフトのオフィスを見学させ、同社の柔軟な働き方を実際に見せたのだという。
「同じカルチャーの中でずっと育つと、力関係が固定化されてしまう。だから考え方のダイバーシティが必要なのかなと思います」(同)
「社長室がない理由」専門家は
MIXIとパナソニック コネクト。両者について、企業経営の視点からオフィス戦略を研究するニッセイ基礎研究所・百嶋徹上席研究員は次のように語る。
「多様なスペースの設置や従業員間の交流・つながり・信頼感の醸成など創造的なオフィス環境の共通要素を『仏』とすれば、それに吹き込むべき『魂』は『経営理念』と『ワークスタイル変革』だ。仏に魂を吹き込んで初めて、創造的オフィスを起動できる。
MIXIは2022年4月から、リモートワークとオフィスワークを融合した新しい働き方であるハイブリッドワークを『マーブルワークスタイル』と銘打って、いち早く制度化した。グーグルなど米国の巨大ハイテク企業でもコロナ後に広がった働き方だ。パナソニック コネクトは、23年7月から週3日以上の出社を原則化するとともに、同2月から業務生産性向上に向け生成AIをいち早く導入した。
両社に社長室がないのは、上下関係にこだわらないフラットな組織を志向する経営理念を示している。両社は、革新的な働き方改革と経営理念を、先駆的に、オフィス環境に注入してきた」
従業員だけでなく、役員や社長も同じ空間に居合わせることで、風通しのいい組織が生まれていくのかもしれない。
(文/白石圭)
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