小学生の頃、授業で実作まで経験したはずなのに、いざ「詩とは何か?」と問われると、すっきりとは答えられない。カラオケではいろんな歌詞を熱唱しても、現代詩なんて読んだことがない──多くの日本人にとって詩は、もうずいぶん前から縁遠い表現分野になっている。
そんな状況下、詩人の平田俊子が編者となった『詩、ってなに?』は、いくつもの企画で詩の世界へと読者を誘う。
まずは平田による、詩の創作実践を兼ねた「はじめに」。次に、彼女が先生となって計4回行われた、女優と音楽家の女性2人への創作指導ドキュメント。この3人に谷川俊太郎と歌人の穂村弘が加わって実施された、連句ならぬ連詩の制作ドキュメント。平田が選んで解説を添えた「読んでおきたい日本の詩十編」。俳優の佐野史郎と平田の対談。巻末には、有名無名問わず日本に暮らす老若男女45人が書いた詩をずらっと掲載している。
平田が詩を書くときに必要と説く〈大胆であること。繊細であること〉を反映させたような多彩な切り口をとおして伝わってくるのは、詩が自由に言葉を楽しみ、自由に味わう芸術であるということ。しかし、創作指導を受けて連詩にも参加した女優が〈今回詩を習って、詩って本当に自由だな、一番自由だなって思いました〉と感想を語ると、谷川はこう言いきった。
〈それが最大の欠点なんですけどね〉
さて、自由が最大の欠点である詩とは何か? 推敲を必要とする自由表現か? 編者の平田は昔も今も自問し、これからも答えは見つかるはずはないと自覚しながら詩を書いている。
※週刊朝日 2016年10月28日号