《神官ホル(ホルス)のカルトナージュとミイラ》(部分)/前760~前558年頃(写真:Brooklyn Museum)

 そうして見えてきたもののひとつが、古代エジプトの働き方事情だ。「いかなる強制労働にも人を徴用してはならない」と明言する王をトップにしたピラミッド作りの現場は、これまで言われてきた過酷な環境とは少し違って、意外にホワイトな面も。

 河江さんによると、例えば人々には数日おきに、1個9500キロカロリーという恐ろしく高カロリーのパンが支給され、ほかにナマズやヒツジ、ヤギなどのタンパク質もぬかりなく食べていたらしい。

庶民はもっぱらビール

 ちなみにツタンカーメンの墓からワインの壺が発見されており、マリアージュのお供は赤ワインと考えられていたが、残っているワインラベルを解析したり、樽に残った成分などを調べたりすると、赤・白、両方が飲まれていたことがわかっている。さらに何年もののどこ産かも記されていたという。

「ただしワインを味わえるのは、主に王族など上流階級の人たちのみ。庶民たちはもっぱら、ビールを飲んでいたようです」(同)

 庶民はビール……そんな昭和時代の法則は、3千年前の古代エジプトでも鉄板だったとは! 会場では、河江さんの監修によるこうしたトリビアがいくつも紹介され、見どころのひとつになっている。(ライター・福光恵)

《人型棺の右目》ガラスが使われている/前1539~前30年頃(写真:Brooklyn Museum)

AERA 2025年2月24日号より抜粋

※「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」は東京・六本木の「森アーツセンターギャラリー」で4月6日まで開催している

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