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■自家製麺、手作りワンタンで人気加速
6年間の修業を終え、いよいよ独立に向けて動きだす。物件を探すが、バブル真っ盛りだったこともあり、なかなか物件は出てこず、出てきても高くて手が届かなかった。駅前の物件は難しいと判断した頃、目黒の山手通り沿いの物件が見つかった。土地勘はなかったが、ここでやるしかないと「かづ屋」をオープンした。1989年のことだった。
10坪でカウンター15席。近隣の会社員を中心にランチタイムはにぎわったが、夜は厳しい日々が続いた。雑誌やテレビで紹介されるようになってから少しずつお客さんは増えていった。
その後、店の隣に新しいラーメン店ができた。その店は2年ほどして閉店してしまったが、またラーメン屋ができては困ると思った數家さんは、隣の物件も借りて大きな店に改装することにした。店を大きくしたことによって、念願の自家製麺をスタートすることができた。さらにワンタンの皮も自家製に切り替え、ここから一気に人気が加速していった。創業から12年目の2001年の頃だった。
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「インターネットが流行りだして、新たなムーブメントが起こってきた頃です。新しいお店もたくさんできてきて、ラーメン業界全体が活気を帯びてきました。異業種からもたくさんラーメン業界に入ってきて、面白い動きになってきたのを覚えています」(數家さん)
店が広くなったことにより客層が変わり、家族連れが来るようになったという。常連客も増えてきて、ラーメンフリークに頼らない店舗運営ができるようになってきた。
「かづ屋」のブレイクから東京でワンタンメンが広がっていく。「たんたん亭」以前は、四谷にある「こうや」ぐらいで、なかなかワンタンメンを看板メニューに据える店はなかったが、「かづ屋」を始め「たんたん亭」系の店が増えていくことによって、ワンタンメンの人気は加熱していった。
■「独立支援」で恩返し
さらに、「かづ屋」は多くの名店の店主が輩出していることでも有名だ。「はやしまる」(高円寺)、「なかじま」(高崎)、「しなてつ」(荏原町)、「小むろ」(行徳)、「松波ラーメン店」(松陰神社)、「穀雨」(渋谷)、「支那ソバ すずき」(桜ヶ丘)、「かでかる」(沖縄)、「麺屋悠」(大久保)、「くろ松」(高崎)、「おさだ」(大山)など、どこもエリアを代表する超人気店で、名前を挙げればキリがない。