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税制改正大綱で発表されたiDeCo変更点に対しネットでは怒りの声が。「出口」の税金はどれくらい取られるか、非課税で受け取れるボーダーは。AERA2025年2月24日号より。
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2024年12月、与党税制改正大綱が発表され、iDeCoの制度変更の概要が判明。ファイナンシャルプランナーで税理士の西原憲一さんが解説する。
「主な改良点は掛け金アップです。自営業者は月6万8千円から7万5千円に(iDeCoと国民年金基金との合計額)。会社員で企業年金のない人は月2万3千円から6万2千円に。企業型DC・DB等に加入する会社員、公務員は月2万円から6万2千円(企業年金との合計額)になり、従来のiDeCoの上限は撤廃。専業主婦(夫)などの第3号被保険者は月2万3千円のまま変更はありません」
拠出金アップはいつ
拠出額≒積立額は全額、所得控除されるので、毎月の金額を増やせば節税度をアップできる。拠出額が上がるのはいつ?
「早くても26年1月以降、遅ければ28年になるかもしれません。通常国会で承認された後、徐々にはっきりするでしょう」
改悪もサラッと盛り込まれた。iDeCo受取時の税金が上がる人が増える、嫌な変更だ。先に「これまで」の説明を。
「会社員の場合、iDeCoの受取金(一時金として受け取る)は退職金と同様の扱いです。受取時に退職所得控除が適用され、税金が安くなります。これまではiDeCoを60歳で受け取り、勤務先からの退職金を65歳で受け取ることで、退職所得控除がまるまる2回使えました。いわゆる『5年ルール』です。今後、これが『10年ルール』に変更されます」
今後、退職所得控除をフルで2回使うには(たとえば)60歳でiDeCoを一時金で受け取り、70歳で勤務先からの退職金を受け取ることになる。現実的には不可能に近い。お上の本音は「退職所得控除を2回使うことを封じたい」だろう。この改悪により損する可能性が高いのは退職金が高い会社員だ。
なおiDeCoは年金のように分割で受け取ることもできるが、雑所得扱いで課税となるケースが多い。受け取り1回当たり440円の手数料もかかる。
「iDeCoの『入り口』は改良ですが『出口』は改悪でしょう。一生に関わる制度設計において、後出しでこうした重大な変更が行われるのは残念です」