数々の恋愛を経て、今覚えていること

 では高一、高二、高三と学校の一、二を争うイケメンと付き合い、他にもたくさん愛の告白をされて、大学の同級生と二十五で結婚したA子と私はどちらが経験豊富なんでしょう。高三の時点ではA子だったけど。中学の同級生と結婚し、十年以上円満だったのに四十手前で突如として別れたB子は?

 経験に優劣なんてないと私は思っています。学年一のイケメンとラブラブで付き合った一年間と、百人の男と寝た一年間、ひたすらモテずに恋愛の妄想を繰り広げ、毎晩同人漫画を描いていた一年間、どれもある意味実りはあるだろうし不毛と言えば不毛でもあるだろうし失うものもあると言えばある気がします。そんなことより、おそらくこれから複数回するであろう恋愛の傷やオチ、痛みや笑いや悪口や妬み、あるいは恋愛の不在を嘆く言葉を共有できる女友達こそ重要だと私は思うのです。

 別に高校時代に誰と付き合おうと、これから酷い男に悩まされたり、優しくしてきたチャラ男をつい好きになってしまったりすることはあるでしょう。確かに男性と話した回数が少なければ、そういう罠に今後数年で落ちる回数はやや多いかもしれません。

 でもそんなことは気にしないでよくて、恋愛をいつ始めるかなんて自由なので、存分に不毛な恋をしたり、騙されてやさぐれたり、骨の髄まで快楽に溺れたりしてみてください。四十歳になって覚えているのは高校時代や大学時代に通り過ぎて行った男の数や質ではなく、それを笑い合い、悪口に付き合い、ストレスを発散した、あの深夜の女同士のカラオケボックスや安居酒屋のことばかりです。

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