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物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年2月17日号より。
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先日、埼玉県八潮市で起きた道路の陥没事故では、1週間以上たった2月5日時点でも復旧のめどはたっていない。周辺では光回線のインターネットや固定電話が使えなくなるなどの影響も出た。
国内で年に3千件も道路陥没が報告されていると聞けば、もはや他人事とは思えない。こうした陥没の多くは、下水管や雨水管の老朽化・破損が原因だそうだ。わずかな漏水が地中の砂を流し、見えない空洞をつくっては、ある日突然、道路が崩れてしまう。
道路や橋、水道管といったインフラの老朽化問題は、以前から深刻化している。特に人口が減りつつある地方では、同規模のインフラを維持するのはほぼ不可能に近い。予算の確保がままならず、改修工事や安全対策を後回しにせざるを得ない状況が各地で起きている。
本来、こうした維持コストは見えにくいが、水道事業だけは料金の値上げという形で住民に迫ってきた。たとえば、新潟市では1月から水道料金が29%も値上げされた。人口減で水道事業の収入は落ち込む一方、管や浄水施設をすぐに縮小できるわけでもない。結果的に一人ひとりの負担が増す。外資系コンサルのEY Japanなどの研究グループによれば、2046年までに全国の事業者の約96%が水道料金を引き上げる可能性があるそうだ。
こうした問題への解として、昔から唱えられてきたのが「コンパクトシティー」だ。居住地や公共施設を一定範囲に集約すれば、広範囲に延びたインフラを整理でき、水道管や道路の更新費、人材を大幅に削減できるはずだ。ところが、住まいは個人の自由にかかわる話であり、「このエリアに住んでください」と強制するのは難しい。行政が移住支援や公共交通の整備で誘導を試みても、住民の納得を得るのは容易ではない。結果として、老朽化した広域インフラをズルズル抱え込む現実がある。