自身の感性を磨き続けるため「誤解を恐れずに言うなら、自分のことしか見ていないかもしれない」と語る斉藤由貴さん(撮影/篠塚ようこ)

「自分のことしか見ていないかもしれない」

――斉藤さんと同じように、ファンの方々も楽曲の捉え方が変化しているかもしれないですね。

 デビュー40周年ということは、楽曲そのものもそれくらい経っていますからね。私自身は40年人生が進んでいるし、そのギャップをどうやって一つにつなげるか、自分のなかでどんな納得の仕方をするかは難しいところもあるんです。コンサートに来てくださる方の年齢層はいろいろなんですが――シティポップというものが流行っているらしく、若い方も来てくださるので――少なくとも私と同じくらいの年齢で、同じように人生の時間を歩んできたお客さんに対しては、私の歌を通して、それぞれの若い頃を思い返してほしくて。生きてきた日々、努力したことなどもそうですけど、私を通してご自分を見ていただけたらなと。

――「自分の歌を受け取ってほしい」ではなく、それぞれの人生を振り返って欲しいと。

 はい。私はずっと歌手一筋で頑張ってきた人間ではなくて、もっぱら女優として生きてきて。ひょんなことからアイドル歌手としてデビューはしましたけど、途中、長いこと歌から離れていた時間もありましたし、なんなら大して上手くもないわけです。それでも20周年あたりから、少しずつ歌う機会が増えてきて、10年前からはビルボードライブで毎年クリスマスライブを続けさせてもらって。こんな私が歌い続けられるのは当然、聴きに来てくださるお客様がいらっしゃるからですよね。そのことを思うと、「私を見て」「私の歌を聴いて」ではなく、「一緒に時間を過ごしてくれてありがとう。どうぞ私の歌を通して、ご自身の人生を振り返ってみてくださいね」という気持ちが強くなるんです。

――斉藤さんが心のエネルギーをしっかり使って歌っているからこそ、ファンの皆さんも魅了されているんだと思います。ご自身の感性を磨き続けるために、意識していることはありますか?

 何だろうな……。誤解を恐れずに言うなら、自分のことしか見ていないかもしれないですね。先ほど言ったことと逆のことを言うようですが、「お客さんのため」とか「観てくださる視聴者のため」、最近で言えばSNSの評価のためではなく、自分のエリア以外のことにほとんど関心を持たないことが大きいと思います。

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いかに堂々としていられるか