『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』ヤードバーズ
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『コンプリートBBCライヴ』レッド・ツェッペリン
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『ラウド・ヘイラー』ジェフ・ベック
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『ライヴ・イン・サンディエゴ』エリック・クラプトン with J.J.ケイル</p>

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<br />大友博コラム第78回 『ライヴ・イン・サンディエゴ』エリック・クラプトン with J.J.ケイル
『ライヴ・イン・サンディエゴ』エリック・クラプトン with J.J.ケイル

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 このニュースを聞いて、お、いいね、と思った人は多いのではないだろうか。

 そのなかには「世界三大ギタリスト!」という言葉が浮かんだ人も少なくないだろう。説明の必要はないかもしれないが世界三大ギタリストと称されるのはジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、エリック・クラプトンの3名。ジミー・ペイジは、レッド・ツェッペリンのリーダーにしてギタリスト。ジェフ・ベックは、1967年にボーカルのロッド・スチュアート、ベースのロン・ウッド(現ローリング・ストーンズ)などを率いてジェフ・ベック・グループを結成、その後、ベック・ボガート・アンド・アピスを結成し、解散後は、ソロで活動。『ブロウ・バイ・ブロウ』や『ワイアード』などのヒット作を出している。そして、エリック・クラプトンは後ほど詳しく語ることになるヤードバーズを脱退後、ジョン・メイオールとザ・ブルースブレイカーズに参加、ジャック・ブルースやジンジャー・ベイカーと3人組のクリームを結成、スティーヴ・ウィンウッドやベイカーらとブラインド・フェイスを結成、《レイラ》で知られるデレク・アンド・ザ・ドミノスを結成と、いくつものバンドを作っては辞め、やがてソロ活動を開始、ライヴ活動とレコーディングを続け、現在に至る。

 3大ギタリストといわれるだけあって、3人とも素晴らしい経歴だ。

 そして、この3人が同じグループに所属していたということを知っている人は、なかなかのロック通だと思う。

 そのグループこそヤードバーズ。1962年頃からロンドンで演奏活動を開始。64年の3月にロンドンのライヴハウス、マーキー・クラブでの録音をアルバム『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』として65年に発表している。この時のギターがエリック・クラプトンだ。ヤードバーズのレコード・デビューであり、18才のクラプトンにとっても初めてのレコードである。もっとも、この前のサニー・ボーイ・ウィリアムソンとの演奏も後に、レコード化されるのだが。

 とはいえ3大ギタリストがヤードバーズに同時に在籍したわけではない。

 かんたんに紹介すると、結成時のギタリストはこの3人のいずれでもなかったが、まもなく2代目のギタリストとしてクラプトンが加入。しかし、ブルースが演奏したくて加入したクラプトンだったのだが、ヒット曲を狙っている他のメンバーと方向性が合わなくなり、脱退。もっとも、この頃録音した《フォー・ユア・ラブ》はヒットした。プロモーション・フィルムも残っているが、メンバーは中世の騎士の衣装や鎧を着て演奏している。けれど、メンバーの顔を見るとクラプトンではなく、ジェフ・ベックが演奏しているようだ。

 ジェフ・ベックが加入したのはクラプトンの脱退後。クラプトン脱退の際、3代目ギタリストとして最初に声がかかったのはセッション・ギタリストとして活躍していたジミー・ペイジだったが、彼は参加せず、代わりに推薦されたジェフ・ベックが参加したのだ。先ほどの《フォー・ユア・ラブ》の映像も、ベックの参加後に作成されたものだろう。

 その後、ベースが脱退し、後釜として加入したベーシストがジミー・ペイジだった。やがてバンドはベックとペイジのツイン・ギター体制となる。

 このころの映像が、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画『欲望』に納められている。主人公がライヴハウスに行く場面で演奏しているのがヤードバーズであり、演奏をするベックとペイジの姿を観ることができる。そのなかで、ベックのアンプの接触が悪く、ノイズが出て、イライラしたベックは最後にはギターを叩きつけて壊している。これも演出なんだろうなあ。

 その後、ベックはメンバーとの仲がうまくいかずバンドを去り、ペイジの時代が始まる。

 この頃、ヤードバーズは本国の英国よりもアメリカやヨーロッパでの人気が高かったので、ツアーに明け暮れていたようだ。

 そして、だんだんとバンドは崩壊し、ペイジはメンバーを入れ替える。
 ローリング・ストーンズの《シーズ・ア・レインボー》への参加などでも知られるセッション仲間だったジョン・ポール・ジョーンズ、無名のシンガー ロバート・プラント、その友人のジョン・ボーナムが集結する。契約の問題などから、ニュー・ヤードバーズと名前を変えるが、結局レッド・ツェッペリンとしてデビューし、大成功を収める。
 ここで、ヤードバーズの幕が閉じたわけだ。

 今回、この原稿を書くに当たり、サイトで動画を検索してみたのだが、ヤードバーズに関する映像が思っていた以上にたくさんあるのに驚いた。

 レッド・ツェッペリンの1枚目に入っている《幻惑されて》(歌うのはヤードバーズ最初期からのボーカル キース・レルフ。初期の頃はアイドル顔)、シーナ&ザ・ロケッツの《レモン・ティー》の元歌などとも言われる《トレイン・ケプト・ア・ローリン》などが見物だ。動画を検索する場合、「ヤードバーズ」で探すのもよいが、「Yardbirds」で探すのを忘れてはならない。

 今回のベックとペイジの来日は、日本で初開催となる英国のクラシックロック誌主催のロック界アワード「CLASSIC ROCK AWARDS」に合わせたもの。その授賞式とライヴにベックとペイジが登場し、ジャムセッションを繰り広げるとのことだ。ギター・ファンには夢の一夜となることだろう。 [次回10/19(水)更新予定]

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クラシックロックアワード2016

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