過去の分限免職事例

 村松弁護士によると、「能力不足による分限免職は少ない」というが、過去にも例はあった。

 2016年には大阪市の中学の女性教諭が、全盲の生徒に「時計を見なさい」と指示したり、足が不自由な生徒を実習で立たせたりする行為を繰り返した。研修を行ったものの改善する意思が見られず、分限免職になった。

 2017年には大阪府警の警察署の地域課の警察官が、事件現場から離れたりパトロールを拒否するなどを繰り返し、分限免職に。

 処分された側は、取り消しを申し立てることも可能だ。

「国家公務員は人事院、地方公務員の場合は人事委員会に審査請求ができます。取り消しが認められない場合は、裁判所に訴えを起こすことができます」(村松弁護士)

 2023年には、能力不足と判断され分限免職となった本県宇城市の男性元職員が訴訟を起こし、熊本地裁が処分取り消しを命じている。地裁は、「職員への支援が不十分」「他部署への異動などの措置を検討していない」などを取り消しの理由とし、最高裁は上告を受理せず確定している。

致し方なしか、厳しすぎるか

 公務員でも民間でも、仕事をしなかったり、無断欠勤やミスを連発し職場に迷惑をかけ続けたりする人はいる。仕事先に迷惑をかけるだけではなく、フォローを余儀なくされる同僚が疲弊していく弊害もある。

 厳しい処分を致し方なしと見るか、厳しすぎると見るか。

 村松弁護士は、「多くの公務員がきちんと業務を行っているのに、明らかに適格性が欠如した人によって、公務員不信につながるケースもあります。適正に運用することが必須ですが、能力が著しく不足している場合に分限免職を認めるのは妥当で、結果として公務員への信頼につながると考えます」と指摘した。

(ライター・國府田英之)

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