
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年2月17日号にはSAKE JAPAN 代表取締役社長 西條智洋さんが登場した。
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日本酒の国内出荷量は年々減少傾向にある。農林水産省によると、2023年の国内出荷量はピークだった1973年の2割程度にまで落ち込んでいる。
そうした現状を自らが得意とするイベントの企画やプロモーションで変えていこうと、2022年に日本酒のPR会社を設立。主なターゲットはアルコール離れが顕著だとされる若年層だ。意外な組み合わせを大切にしたコラボ企画や、ラベルのデザインやネーミングなどの演出でファンの獲得を目指す。
「日本酒に限らずアルコール自体をあまり飲まない若者にアプローチしていくためには、これまでにない視点が大切だと思っています。そうした視点を手に入れるために、年齢や業界を問わず、さまざまな人と接点を持つことを重視しています」
元々、国内外のイベントの企画や演出を手がけてきたが、コロナ禍で多くが中止になった。打撃のさなかに依頼を受けたのが、都内にあるコミュニティースペースの飲食店で開催するイベントの企画だった。チケット制で日本酒と日本酒に合う料理を提供すると大盛況で、「日本酒の可能性を感じた」という。
「日本酒はフルーティーなものから辛口なものまで味の幅が本当に広い。まずは発信力のある若い人に飲んでもらい、最終的に世界に広めたいと考えるようになりました」
会社の設立に合わせて、酒類販売業免許を取得。蔵元の人たちと活動するにあたり、酒造りを一から学ぼうと、酒米の田植えから収穫、酒造りまでを体験した。
設立から1年後には、各地の40の酒蔵が出展した日本酒を味わえるイベント「SAKE JAPAN EXPO」を開催。2024年に東京駅近くの会場で開催した「SAKE JAPAN WEEK」も大盛況に終わった。
「今では多くの酒蔵が協力してくれていますが、最初に各地を回ってお願いした時はなかなか理解してもらえませんでした。でも、造る人とPRする人で形は違えど日本酒の文化を大切にしたい気持ちは同じ。話をするうちに熱意が伝わりました」
今後は海外への展開にも力を入れる。海外の飲食店や商社との取引の話も進んでいて、国内で開催してきたイベントを海外でも開催したい考えだ。(ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年2月17日号

