「アプリ経由で来たお客さんはいない」

 だが、実際にアプリを開くと、紹介されている温浴施設はたったの2社。そのうちの1社、北海道留萌郡小平町にある「ゆったりかん」に利用状況を取材すると、意外な答えが返ってきた。

「ハビタット? いや、うちは契約はしてないです。今、初めて聞きました。なので、そのハビタット経由で、うちの施設に来たお客さんもいないです。そもそも、うちは今ネット予約そのものを受け入れていないので」(同施設の支配人)

「habitat」では、アプリでこの「ゆったりかん」の日帰りプラン1回利用チケット500円、ハンドタオルとバスタオルのセット700円、サウナマット1400円、ヒゲソリ50円などを購入することができる。ためしに「購入」ボタンを押すと、クレジットカードでの決済画面に飛んだ。

 支配人はこう続ける。

「その値段をみると、うちの通常の販売価格ですね。ただ、うちは契約も何もしていないので、仮にお客さんが(購入済みの)画面やコピーを持ってこられたとしても、対応はできかねます」

 この施設は、小平町役場の施設で、役場から民間企業が指定管理者として選定された上で運営している。

「うちはまだ指定管理者になって2年くらい。業者はいくつも変わっているので、2年以上前に指定管理を受けた会社が契約して、そのままになっているという可能性もないとは言えません」(同)

 同じく、アプリで紹介している2つ目の施設は、岡山県美作市後山の「愛の村パーク ゆ・ら・り・あ」だった。この施設も美作市の指定管理者が運営している。電話をすると、支配人は「habitat」を利用していると話す。

「ハビタットは利用して2年目くらいです。利用客は昨年1年間で、私が知っているだけで4~5人あったかなという状態ですね。うちはご年配のお客さまが多いので、利用年齢を考えると、若い人が使ってくれたのかなと思います」

 サウナ、温浴業界のデジタル化を掲げて起業した北村氏だったが、開発したアプリの利用状況は思わしくなかったようだ。

 「Habitat」の問い合わせフォームより、実際のアプリの稼働状況について質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。

 質問送信後にアプリを確認すると、前出2社の施設の情報は消され、「表示できる施設はまだありません」という表示に変わっていた。

 29歳という若すぎる夫の死に、小さい子どもを持つ小島はまだ悲嘆にくれているという。時間はかかるだろうが、その悲しみが少しでも癒えることを願ってやまない。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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