開幕記念会見で笑顔をみせる(右から)松下優也、松下洸平、フロレンティナ役の咲妃みゆ(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 やがて軍靴の音が聞こえ、二人は戦地に駆り出される。戦闘服に着替え戦地に立つシーンは火薬のにおいすら漂ってきそうな迫力で、時代に抗えない残酷さをも感じさせた。

 その後、二人の人生は急激に交わっていく。互いを意識しすぎるあまり、周囲を顧みようとせず、頑なに憎み合った二人の宿命の物語。栄光と挫折を経験して何を得るのか。現代においても共通する、気づきを与えてくれる作品になっている。

 役柄では対立するが、互いに「優也」「洸平君」と呼び合うという主演の二人は声をそろえて「ライバル意識はまったくない」と話す。23日に行われた開幕記念会見では「僕の愛する相棒」(洸平)、「最高の相棒」(優也)と、視線を合わせて笑顔で語った。

 世界初演となるミュージカルを作り上げるうえで、松下優也はその存在が支えになったと松下洸平を評する。

「新作となると、稽古の過程でどうしても切羽詰まってくる時期があると思う。でも、そういったこともなく穏やかに進められた。それは洸平君が隣にいたから。その冷静さに助けられましたし、最高の存在です」

 松下洸平はこう応えた。

「ライバル意識ではなく、互いにリスペクトがあるからこそ、舞台上ではバチバチにやりあえる。こちらがどれだけ吹っ掛けても乗っかってきてくれるし、絶対的な信頼関係があります」

まだまだ進化する

 松下洸平にとってミュージカルは6年ぶり。

「久しぶりでプレッシャーもありましたが、本当に素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんに支えられています。まだ誰もやったことのないものを我々はやっているので、すごく新鮮な作品。そのフレッシュさを一人でも多くの方に劇場で体験していただきたいです」

 東京公演の初日、松下洸平はカーテンコールで力強く宣言した。

「我々はこれからまだまだ進化します」

 過去に前例なく歌い手もいない、オリジナルのミュージカル。出演者たちは新たな境地へと進化を続けている。

(編集者・秦正理)

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