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「自分の声が好きになれない」と感じる人は少なくないだろう。声を作らず、自分の「素の声」で会話をできているだろうか。声のプロは自分の声とどう向き合っているのか。AERA 2025年2月10日号より。

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 素の声の大切さ。それは声優など「声のプロ」にとっても同じだ。東京・銀座のボイストレーニングスクール「WACCA MUSIC SCHOOL」の声優コース講師、AKITAさんは生徒たちに「まずは地声を知ることが大切」と教えている。

「地声とは、緊張する必要のない相手とのリラックスした状態で出ている声。その人の人間性を表すものだと考えています。上っ面で作られた声では、聞き手の心に響いてこないんです」

地声過ぎてもだめ

 でも声優になるための訓練というと、個性的な「特別な声」を作り上げるために行うものというイメージもあるが……。

「プロとして活躍している方々の魅力的な声を聞き、そんな声優やナレーターの真似から始めようとする生徒さんも多いです。ただプロの声と、まだ素人の生徒さんの『作った声』は、まったく別のものなんです」

 たとえば「ドラえもん」の声を担当するとなると、素人はその見た目に合わせて、まず声を作っていこうとする。しかしプロの声優によるドラえもんの声は、「地声の延長でドラえもんになりきった」その結果、勝手に出てくる声なのだと、AKITAさんは言う。

「かといってただ地声で演じたのではキャラクターの世界観と離れてしまうし、オーディションにも受からないでしょう。その意味では、地声過ぎてもだめ。最初からテクニックに逃げず、あくまでも地声をベースに、作品やキャラクターの世界観に入っていく意識が重要なんです」

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勝負するしかない