大きな批判を呼んだ1月17日の記者会見から10日後、フジテレビが2度目の会見を行った。企業の危機管理広報の専門家が“やり直し会見”を読み解く。AERA 2025年2月10日号より。
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10時間23分。日本の報道史でも類を見ない長い会見だった。
1月27日、フジテレビが中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる一連の問題について、2度目の記者会見を開催した。前回、17日は正式参加を記者会に加盟する通信社・新聞社に限り、動画撮影も認めなかったことから大きな批判を呼んだ。今回は一転、媒体に制限を設けない「フルオープン」での開催となり、冒頭は生中継可、質疑応答は10分間のディレイと、プライバシーに関する発言があった場合に当該部分をカットすることを条件に放送が認められた。フジテレビ企業広報部によると、会見に参加した記者らは437人。事前申請した記者のほか、当日直接来場した者も含め、全員の入場を認めたという。
その分、混乱も目立った。YouTuberの男性はディレイの条件を守らず生配信を実施、スタッフの注意も聞かなかったため退室させられた。また、質問に立った記者が10分超にわたって持論を開陳したり、登壇者が回答を撤回したことで記者が納得せず紛糾したりする場面もあった。会見が終わったときには午前2時を回っていた。出席した記者のひとりは言う。
「10時間分の中身があったとはとても言えません。同じことを何度も聞く記者やマナーの悪い記者がいる一方、要領を得ない回答も多かった。報道陣にもフジテレビにも反省すべき点が多い会見でした」
何とかスタートライン
「謝罪会見のプロ」はどう見るか。企業の危機管理広報を手掛けるエイレックス代表の江良俊郎さんは会見をこう評する。
「前回17日は、形態も内容もあまりにもひどかった。ゼロ点どころか大きなマイナスでした。批判が高まり、やらざるを得なかったのが今回です。評価できる部分もあり、危機対応としては前回のマイナスを取り戻して、何とかスタートラインに立ったというところでしょうか」
特に、時間制限を設けずにすべての質問に答える姿勢を見せた点、冒頭で女性への謝罪や人権意識の欠如を反省する発言をするなど、認識のズレがかなり修正された点は評価できるという。問題を追及してきた「週刊文春」が会見翌日、当初の報道内容を一部訂正したことも同社にとって「追い風」となる可能性があるだろう。一方、十分でない部分も多かった。