東京に一極集中し、地方では不足しているイメージがある医師の数。10万人あたりのデータを比べてみると、違う傾向が見えてくる。AERA 2025年2月3日号より。
【図を見る】人口10万人あたりの医師数最下位、実はあの県・・
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厚生労働省は昨年12月25日、医師の地域偏在に対する新たな対策案をまとめた。だが、そもそも医師はどこに偏在し、どこで足りていないのかを把握している一般の人は少ないだろう。
都道府県別に医療機関で働く人口10万人あたりの医師数を見てみよう。最も多いのは徳島県の335.7人。2番目が高知県の335.2人で、京都府334.3人、長崎県327.6人と続く。最も多そうな東京都は、5番目で324.6人となっている。
人口と異なり、東京や首都圏が圧倒的に多いわけではない。むしろ人口の少ない地方でも医師の割合が高い自治体は多い。
一方で、人口10万人あたりの医師数が最も少ないのは、埼玉県で180.2人。徳島県の半分ほどだ。続いて少ないのが茨城県の202人、千葉県209人と東京周辺の首都圏が続く。
こうした傾向について、医師の偏在に詳しい医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は言う。
「医師が多いのは四国、九州です。東京は飛びぬけて多いわけではなく、西日本と同じ水準です。医師数は、西日本に多く東日本は少ない『西高東低』です」
「東京vs.地方」という構図で考えるべき問題ではなく「西高東低の医療格差があるということです」(上理事長)
医学部の有無が関係
なぜ西高東低がこれだけ顕著なのか。
上理事長は「医学部の存在の有無が関係しています」と分析する。
西日本の医学部はほとんどが国立大学だ。九州の医学部11校のうち8校は国立、四国の4校はすべて国立だ。一方、首都圏(1都3県)では、国立の医学部は東京大学、東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)、千葉大学だけとなっている。
「地域医療に力を入れる国立大学医学部は、人口1400万人の東京に二つですが、68万人の徳島には一つあります。92万人の世田谷区(東京)より少ない人口ですが、国立医学部があるのです」(上理事長)