新規格の金属バットのすさまじい効果

 新規格の金属バットは、予想以上の効果を生んだ。

 高校野球(中等学校野球)の草創以来の本塁打の推移を図表1にまとめた。

筆者作成

 戦前の甲子園球場は両翼が110メートルもあり(現在は95メートル)、日米野球でプレーしたベーブ・ルースが「Too large!(でかすぎる!)」と言ったとされるが、この時期の本塁打の大半はランニングホームランだったと言われる。

 しかし、再改定された金属バットになってからの本塁打数は戦前、そして戦後の木製バットの時代よりも減っている。野球は一変したと言ってよい。

 高校野球の指導者は、口をそろえて「新しい金属バットは芯を食わない(芯で打たないと)と飛ばない」と言う。また、さる内野手は「打球速度が落ちたので、思い切りダッシュして守ることができる」と言った。

 選手の中には「どうせ飛ばないのなら、金属を使う必要はない」と木製バットやラミーバット(竹の集成バット)を使う例も出てきた。「上のレベルで野球をするためにはそのほうがいい」という理由からだ。

野球がまったく変わった

 図表2では、再改定された金属バット導入以前の2023年と2024年の春、夏の甲子園の打撃成績を比較した。

筆者作成

 2023年春は記念大会で参加校が多く、試合数も多かった。また例年、高校野球は春よりも夏が打力はアップする。

 2024年は2023年と比較して、春も夏も本塁打が激減しただけでなく、1試合当たりの得点、打率、長打率も大きく下落した。犠打数は、明らかに増加。盗塁数を見ると春は増加し、夏は減少した。

 ざっくりいって、高校野球の打撃は「小型化した」のは間違いないだろう。

 ただ、それ以外の傾向は、まだはっきりしない。各校の監督は「飛ばないバット」が基本になって、今後、どのような戦術、戦略をとるのか、また選手育成をどのように変えていくのか、模索中ということだろう。

 2024年12月に宮城県仙台市で日本野球学会が行われた。毎年、この学会では大学、研究機関、高校などから最近の野球の様々な課題についての研究発表が行われるが、今回は、2つの高校によって新規格の金属バットを導入したことによる試合内容の変化などの研究発表が行われた。

 和歌山県立桐蔭高校によると、金属バットの規格変更によって「試合の中でチャンスの場面が減少」「昨年まで二塁打になっていたフライが凡打になっていること」が報告された。

 また新潟県立塩沢商工高校は、新潟県大会でのデータをもとに「試合の得点差が縮まり」、「長打率が大きく減少した」とし、新時代を勝ち抜くには「長打率を上げること」「盗塁を有効に使うこと」「走者二塁からの得点をいかに上げるかを考える」ことが重要だとしている。

次のページ