金属バットの弊害
飛びすぎる金属バットによって、野球が大味になり、打球速度も上がりすぎるなど弊害も目立つようになり、2001年に日本高野連は社会人野球と連携して以下の新規格を満たす金属バットを導入した。
しかし、この新規格は全く効果がなかった。
そもそも高校野球選手の体格は年々向上しており、さらには筋トレやプロテインの摂取など、選手がパワーアップに励んだこともあり、本塁打数はまったく減らなかった。
反発係数の規定がなかったので、金属バットメーカーもその規格内で「よく飛ぶバット」の開発を行った。
2010年頃から高校野球は競技人口が減少に転じた。プロや大学を目指す中学生は一部の強豪校に集中し、強豪校と普通の高校との格差が広がった。
トーナメント制の高校野球では、プロを目指すような強豪校と、9人のメンバーを揃えるのが精いっぱいの学校が顔を合わせることもある。
審判たちからは「強豪校の打者の猛打球が、相手校の選手の身体を直撃しないか、怖い」という声があがるようになった。事実、甲子園でも選手が打球で負傷する事件が起きている。
また、芯に当たらなくても振り回せば飛ぶ金属バットを使い慣れた選手は、木製バットを使う国際大会では十分な結果を出せないことが多くなった。
なぜか国際大会で勝てない日本の高校生
例年、高校野球世代は夏の甲子園が終わると選抜チームを作ってU-18ワールドカップやU-18アジア選手権に出場する。日本代表はU-18ワールドカップの前身のAAA世界大会に1980年代から参加しているが、2023年まで一度も優勝できなかった。
アマチュアの強豪国キューバが11回、アメリカが10回優勝しているのは良いとしても、韓国が5回、台湾も3回優勝している。
高校野球部の数で言えば、4000校近い日本に対して韓国は80校、台湾は200校と言われる。国際大会では金属バットは使えず木製バットに持ち替える。日本が国際大会で勝てないのは「飛びすぎる金属バットのせいではないか」と言われてきた。
さらに金属バットに慣れた高校生が卒業後、木製バットを使う大学、社会人、プロ野球で適応できずに戸惑う例も指摘されていた。
こうした状況から、2021年頃から金属バットを再び見直す動きが出てきた。2024年春からは、高校野球の金属バットは規格が改定された。
以前のバットは「羽子板」と揶揄されたように、芯を外しても強く振りさえすれば飛距離が出た。また肉厚の薄いバットは、ボールが当たると凹んでその反発で飛ぶ「トランポリン効果」で打球を飛ばしていた。それが、打球部をわずか1ミリとはいえ肉厚にすることで、打球速度、飛距離は一挙に下がると期待された。