「Debate」の授業で、いい答えを返した参加者をハイタッチならぬ「肘タッチ」で称える講師。常に和気あいあいとしており居心地もいい(写真:編集部・伏見美雪)

 LVでは、授業の合間の各15分の休憩や、夕食後の行動は自由だが、講師とともに過ごすことが可能だ。夜は、みなで会話だけでなく手品やゲームを楽しんだ。結果として、滞在中は、朝8時半から午後6時半までの10時間、さらに参加自由の午後8~10時の映画鑑賞タイムも入れれば12時間、英語を使い続けることになる。英語へのスイッチの切り替えが早い段階で起こるのも必然だった。

ビジネス英会話の功罪

 社会人向けにもかかわらず、「ビジネス英会話」の設定がないことも、LVの方針。

「要望は多いのですが、僕はそれにいつも噛みつくんですよ(笑)。ビジネス英会話とは、おそらく定型の会話パターンをできる限り多く提供することだと思うんです。が、それは英会話力ではない。そういう定型があるからこそ、日本人の英会話力は伸びていかないんです。大切なのは、自分が日本語でできることに、いかに英語の力を近づけていくか。例えば、クレームを受けたときに、会社の利益も守りつつ、相手も納得させながら、どこに落とし込むか。それを、英語を使って実現することが、ビジネスで英語を使うということだと考えています」(秋山氏)

 そのため、授業のテーマ設定も独自性が高く、かつ実践的だ。例えば、「Angels & Demons」は、悪魔になって講師を唆すチームと、天使になって導くチームとにわかれて、それぞれのメリットを説く。このときは「久しぶりに再会した学生時代の旧友との飲み会、終電で帰る? 朝まで飲む?」がお題。20年に一度の機会なのだから、奥さんもきっと怒らないはず、と悪魔が囁やけば、子どもが待っているから帰らないと、と天使が言い聞かせる、といった具合だ。

「Sales」では、突然手渡されたアイテムを他の参加者に売り込むよう求められた。静岡茶を渡された筆者は、例えば、日本一のお茶の産地の高級茶だとか、カテキンは健康にいいとか、何度も同じフレーズを繰り返すことになるため、自然と口をついて出るようになるからだ。セールスポイントをひねり出して説得にあたる。

 いずれも考える時間は与えられるものの、1人で3~5分程度は話さなくてはならないし、説得には論理性が必要なため、英語での交渉力強化につながる。

 なかでも効果を感じたのは、「Debate」の授業。この日のテーマは「犬はよりも良い伴侶となる」という簡単なものだったが、自分の本来の意見と反対の立場から意見を述べることを求められたため、理由を絞り出して相手を説得するのに一苦労。意見を述べる際、同意や反論をしたり、論点を変えたりするための表現を教わり、それをいくつトークに盛り込めるかを競うという点もユニークだった。何度も同じフレーズを繰り返すことになるため、自然と口をついて出るようになるからだ。まさに「英語を使う」ことに主眼が置かれた、実践できるプログラムになっている。

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TOEIC500点未満でも心配無用