チームごとに分かれてプレゼンのためのディスカッション。EBCでは2~3人でチームを組んでのトレーニングが主体だが、メンバーは内容ごとに組み替えられ、すべての参加者と交流もできる(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 中高6年間、受験も含めてあんなに勉強したはずなのに、英語で話しかけられても言葉が出てこない。会話が続かない。仕事で必須でも、会社勤めだと海外留学する時間は取れない。そんな人も短期間で効率よく英語の力をつける方法がある。AERA 2025年2月3日号より。

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「Hello, everyone! Welcome to our English Boot Camp!」

「日本語絶対NG」が告げられるや、迷彩柄のタンクトップに身を包んだ講師たちが次々と姿を現し、驚くほど大きな声とテンションの高さで、まだ寝ぼけていた頭を一瞬で覚まさせた――。

 英語をもっと話せたらと、20代後半から英会話スクールに通ってみたりネイティブと互いの母語を教え合う「言語交換」をしてみたりを思い出したように繰り返してきたが、日常的に日本語しか使わない環境では限界を感じていた。海外留学でもすれば壁を破れるのではという思いと強い憧れはあるものの、会社勤めの身ではまとまった休みを取ることが難しい。さらに、昨今の欧米のインフレと円安により、英語圏への留学は高嶺の花もいいところだ。そんななか、ふと目が留まったのが、「国内留学」の文字だった。

「合宿制」「研修」など名称は異なれど、短期集中で英会話を身につけるプログラム。なかでも興味が湧いたのが、「日本語禁止」のルールを徹底している2校だ。片や東京都内で1日約10時間×2日間、片や静岡県内の施設に泊まり込みで2~7泊の合宿制。どちらも海外留学に比べたら、時間的・費用的なハードルは高くない。だが、果たしてその効果はいかほどか──身をもって体験して検証すべく、その門を叩いた。

日本語禁止の「英語新兵訓練」

 東京・二子玉川。「2日間でしゃべれる、超短期英会話」が売りのイングリッシュブートキャンプ(以下EBC)は“新兵訓練”の名を冠しているのも頷ける、なかなかにハードな構成だ。

 まず初日の朝、その場でお題が与えられて10秒で考え、他の参加者の前で40秒間スピーチをするという心理的難関がいきなり待ち受けている。リフレッシュできる場所、日本のおすすめなど、お題そのものはけっして難しくないのだが、理由を説明しようとすると半ばで言葉につまり、たった40秒のトークを持たせられない。自分なりに頑張ったつもりだったが、あとでそのときの動画を見せてもらうと、完全に目が泳いでいた。

 オリエンテーションが終わり、以降の「日本語一切禁止」が告げられると、生徒2~3人に1人の講師がつくという手厚いサポートのもと、キング牧師のスピーチに倣い、参加者全員の前で自分の夢を宣言するところから訓練は始まった。

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「異文化の壁」も打破する訓練