世界最高峰のオーケストラ、「ベルリン・フィル」で第一コンマスを務めて15年目。樫本大進が自身の音楽やベルリン・フィル、そして国内外の情勢について語った。AERA2025年1月27日号より。
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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第一コンサートマスタ─(以下、コンマス)を務め、ソリストや室内楽奏者としても活躍するヴァイオリニストの樫本大進(45)。世界のトップオケのコンマスに就任して今年で15年目。今ではコンマスのうち一番のベテランとなった。
オケとソリストの両方を
昨年末にはショパン国際ピアノコンクール優勝経験者であるラファウ・ブレハッチとの共演のため帰国した。その直前には、パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団来日公演のソリストが体調不良で来日できず、急遽、樫本がベートーヴェンの協奏曲を代役として演奏。曲のオーケストラ部分を隅々まで把握する人として、後ろから聴こえてくるさまざまな音に耳を傾け、楽しみながら共に音楽を作っていこうとする姿勢がうかがえた。
「15年の間に僕がベルリン・フィルのメンバーをよく知るようになり、彼らの音楽の作り方に慣れてきましたし、みんなも僕に慣れてきたので、その分ステージは楽になってきました」
時には自身がソリストとしてベルリン・フィルと共演することもある。また、コンマスとしてはソリストを常に支える立場にある。ベルリン・フィルに客演するソリストは皆が第一級の演奏家なので、共演するのはとても楽しみだという。
「オケとソリストの両方をできるのは、曲を理解して演奏する上で本当にラッキーなことです」
一方で、ベルリン・フィルは常に挑戦的なプログラムを組むため、誰もが知る名曲を弾く機会は意外に少ない。ベートーヴェンの《運命》ですら、昨年ようやく弾くことができたという。