AERA 2025年1月27日号より

夫婦別姓をあたり前に

 息子と名字が異なるのを特別視されがちなことにも違和感がある。世間では離婚した女性は婚姻前の姓に戻し、引き取った子どもと新しい戸籍を作ることが多いが、単なる慣習だ。女性は離婚後旧姓に戻り、息子の名字は変えなかった。すると息子の学校から「保護者への手紙を子どもの名字で出していいか」と聞かれたという。

「手紙を配るときに間違えないよう、そう聞かれたのはわかるんですが、家族で名字が異なるのって本当は特別なことではないはず。事実婚の夫婦もいれば、祖父母が子を育てている家庭もある。でも、いまだに『家族は名字が同じ』が基準なんだなって、考えさせられました」

 早く夫婦別姓が選べるようになり、名字が異なる家族が当たり前になるとよいと女性は話す。

 子どもと同居していないシングル女性に向けられる偏見もある。IT企業で管理職として広報の仕事をする50代の女性は5年前に別居した。出産や育児を機に一度は仕事を離れたが、夫も親権を求めて裁判となり、離婚後の子どもとの生活のため再就職した。だが、最終的に子どもは夫と暮らすことになった。

自分の人生を楽しむ

「夫は法学部卒で懇意にする弁護士がいました。子どもが育った家で父子での生活実績を作っていたことや、夫のほうが仕事時間の融通が利いたなどの理由もあり、親権を持つのに有利だったんです」

 すると離婚後、疎遠にしていた知人がおかしな噂をしていることを知った。一般には母親が親権を取ることが多いため、女性の側に不貞や犯罪など非があったと思われたようだ。

「もちろん私は浮気も犯罪もしていません。世間では親権をとれなかった親に対する偏見があるのを感じます」

 女性は離婚してから子どもと会わせてもらえなくなり、一時は精神的に追い込まれたという。だが最近は「自分の人生を楽しんだほうがいい」と考え、趣味の旅行やゴルフの時間を増やすようにしていると話す。

 経済力がある女性たちの離婚後の生活満足度は高い。「離婚=不幸」の思い込みは、幸せを掴むうえでむしろ足かせになりそうだ。

(ライター・大塚玲子)

AERA 2025年1月27日号より抜粋

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