離婚に至るには様々な理由があるが、ストレスを抱えていたことに違いはない。離婚後、それまでのストレスから解放されて生き生きと毎日を過ごしている女性たちに向けられる周囲や世の中からの偏見とは。AERA 2025年1月27日号より。
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大学生と高校生の子どもを育てる東京都の50代の女性にも「離婚=不幸」の印象はない。仕事はITコンサルタント。それなりに稼いでいる分、仕事は忙しいが、いまの生活は快適だと話す。
「シングルマザーというと世間では『困っている人』というイメージが強い。でも私は夫がいない今の生活のほうが、ずっとラクです」
女性は出産した際に会社員を辞め、その後はパートで働いてきた。10年ほど前に夫の転勤で東京を離れ、2年後に戻ってから間もなく離婚を考えるようになった。正社員の仕事を探し、今の仕事に就いたという。
「子どもたちの学費や塾代は基本的に元夫が出しています。マンションは二つあったので一つずつ分けて、以前から住んでいたほうに私たちが住んでいる。ローンは元夫が払っており、家賃はかかりません」
「定形の家族」に直面
子どもたちも大きくなり、「時間もあるしお金もある」いまの状況に何ら不満はない。
「子どもが小さくて一番大変なとき、夫は仕事ばかりだった。家事も育児も全部私一人でやっていたので、夫は別にいなくてもいいと思った。いれば部屋は汚れるし洗濯物も増える。今のほうが全然、気楽ですよ」
女性が離婚したことに唯一ネガティブな反応を見せたのは、自身の母親だったという。
「女一人で大丈夫なの?みたいなことはよく言われます。稼いでいるから大丈夫だと言っているんですが、何が心配なのかよくわかりません」
一回り上の世代は、かつての「普通」と異なる家族構成に漠然とした不安を感じる人も多いのかもしれない。
「離婚してからのほうが圧倒的に心地いい。でも、ふとした場面で『定形の家族じゃないってこういうことなんだな』と感じさせられます」
そう話すのは大学教員の40代の女性だ。約10年前に離婚した。現在は勤務先近くで購入した中古マンションに、10代の息子と2人で暮らしている。仕事は忙しいが、経済的には安泰だ。
離婚してからの暮らしに「9割方、満足」している。だが、いまだに社会は男女の婚姻をベースとした家族を基準としていることを突き付けられる場面があるという。
「たとえばマンションを買うためにローンを組んだときは、私の名義でよいのかと念を押された。体調を崩して入院したときは、息子以外で私をサポートできる大人の保証人を求められた。そういった手続きや医療の場面で『シングルで生きることが想定されていない』と感じることは結構ありますね」