台湾有事についてトランプ氏は、軍事的な対応より中国への高関税で対応するという発言もしている。言葉ひとつで情勢が不安定化しかねない現状は、危ういと言わざるをえない。

 朝鮮半島情勢も激震に見舞われる恐れがある。北朝鮮の金正恩総書記は、ミサイル能力の向上とロシアへの兵士派遣で自信を深めている。韓国政治の混乱をにらみ、「米韓の分断」をはかろうとするはずだ。韓国に左派政権が誕生し、再び米朝首脳会談のような動きになれば、在韓米軍撤退や韓国の核武装が現実味を帯びるかもしれない。

 一方、ウクライナの戦争は、収束への道を探り始めなければならないが、それは困難な道でもある。トランプ氏がノーベル平和賞を意識し、停戦に向けて動こうとしても、ウクライナの安全を保障する停戦条件を整え、ロシアのプーチン、ウクライナのゼレンスキー両大統領を合意に導くのは容易ではない。

 中東ガザでは、イスラエルとイスラム組織ハマスが15日に停戦合意したが、恒久的な停戦になるかは不透明だ。イスラエルがイランの体制転換まで視野に入れて動けば、イランが核保有に向けて走り始める恐れもあり、予断を許さない。(朝日新聞記者・小村田義之)

AERA 2025年1月27日号より抜粋

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