トランプ政権が再び始まった。不穏な言動で周囲を圧し、健全な国際秩序の舵取りや気候変動の解決には無関心なリーダーに、日本を含めた各国はどう対峙していくべきなのか。AERA 2025年1月27日号より。
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トランプ米大統領の再登板を境に、世界の「方程式」は大きく変わる。米国が問題解決を主導する時代は終わり、米国自身が問題となる。これから迎えるのは、そんな時代だ。
過激な言動が目立つトランプ氏だが、その根は、やはりビジネスマンだろう。同盟関係はゼロベースから費用対効果が見直されることになる。最後はディール(取引)で動くのだから、割り切ってビジネスライクに接する手もあるかもしれない。
「米国第一」のトランプ氏の目は常に米国内に向く。
当面の目標は2026年の中間選挙に勝利し、28年の大統領選でトランプ路線を継ぐことだ。米国の対外関与は弱め、むしろ諸外国から何を引き出すことができるか。トランプ外交の本質は内政への貢献にある。
25年は対外援助も含めて歳出を締め、米経済をスローダウンさせたうえで25年末から減税をうち、26年の中間選挙前に経済が上向くよう演出するだろう。
ビジネスの相手として
世界の関心事である健全な国際秩序の構築や気候変動の解決をトランプ氏に期待するのは、お門違いというものだ。そもそもまっとうな解決策を持ちあわせていないし、その問題に関心すらないかもしれない。
「対トランプ」のキーワードは、おそらく対米投資と雇用創出だ。関税を武器に貿易戦争を仕掛けるのも、この二つが狙いだろう。貿易赤字を減らす一方で、米国内の製造業への投資を促し、雇用を増やす。関税や外交は、政治的な政策目標を実現するための道具となる。
だとすれば、日本などがビジネスの相手として何を提供できるのか。その方向で知恵を働かせるのが早道となる。
ただ、トランプ氏は普通のビジネスマンではない。希代の不動産王であり、テレビやSNSのアイコンであり、世論の風をあおって自らの推進力とする才覚を持つ。1期目に政治・外交の経験を積んでおり、その能力を過小評価するのは危うい。