他の外資系の投資ファンドもフジ・メディア・HDに投資している。日本の株式市場では、この数年、ウルフパック(オオカミの群れ)と呼ばれる投資ファンドが協力して企業を攻める共同作戦も行われており、フジ側としてもダルトンの書簡は重要視したようだ。
フジが問われるのは、国内外で高まっている「ビジネスと人権」の意識だ。23年8月には、国連人権理事会の作業部会が日本記者クラブ(東京)で会見を開き、旧ジャニーズの性被害を含め、外国人労働者など多角的に日本企業が取り組む人権への責務について声明を出したことは記憶に新しい。
こうした流れを受け、フジ・メディア・HDも23年11月に「グループ人権方針」を策定。人権を尊重した事業活動に取り組むことを宣言している。
ガバナンスの専門家の八田進二・青山学院大名誉教授は、被害者のプライバシーなどを理由にフジ側が問題を隠ぺいしようとした可能性を指摘する。そのうえで「正常化に向けて何度かチャンスがあったようだ。しかし、経営陣が十分な対応をせず判断ミスになったとも考えられる」と取締役らの責任について言及した。さらに「国民に正しい情報を速やかに伝える役割を負ったメディアの責任も問われる」と投げかける。調査委員会についても、経営陣に都合のよい委員が選ばれないようにしないといけないと訴えている。