フジテレビ本社(photo 朝日新聞社)
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 フジテレビが定例の社長会見を前倒しして調査委員会の設置を表明した背景の一つには、大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツの存在があった。

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 社長会見に先立つ14日には、フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(HD)の取締役会に対し、第三者委員会での調査や信頼の回復を求める書簡を送付していたことを明らかにした。

 「物言う株主」で知られるダルトンは、書簡で一連の問題へのフジの対応には透明性が欠けているなどとして、「コーポレートガバナンス(企業統治)に重大な欠陥があることを露呈している」と指摘した。

 今回のダルトンの対応について、「大株主の責任としては当然の行為だ」(投資ファンドの関係者)という声がある。SNSなどでも、ダルトンを支持する声が強い。

 これまで外資系の投資ファンドはアクティビストと呼ばれ、ハゲタカのような悪い印象も強かったが、別の関係者は「これでイメージが変わる可能性がある」とも言う。

 ダルトンとは何者か。このところ、日本に強い関心を示し、共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏は2024年秋、東京都内であったセミナーに米大リーグのロサンゼルス・ドジャースの帽子をかぶって登壇し「日本の経営陣は裸の王様だ」と述べた。日本でも投資ファンドが、投資先の企業に対して経営に関わる要求をしやすい環境が整いつつあり、今後も「物言う株主」として行動することを強調したものだ。

 フジ・メディア・HDが昨年6月に提出した有価証券報告書によると、金融機関を除くと、大株主として、2位の東宝(全体の8・48%)、4位の文化放送(3・56%)、5位のNTTドコモ(3・52%)などが名を連ねる。

 ダルトンは「7%以上を保有する」としている。役員の改選などは株主総会で過半数の株主の賛同が必要で、定款の変更など重要なことは3分の2以上の賛同が求められる。

 つまり、株式会社の世界では、3分の1超をにぎれば、拒否権を持つことができる。そして、現実には株主の投票率は6割程度なので、実質的には20%ほどで会社はその株主の発言を無視できなくなる。

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オオカミの群れと呼ばれる共同作戦