「一般論ですが、薬品株は景気がピークアウトして悪くなりかける局面で買われる傾向があります。今はなぜか武田薬品工業だけが突出して売買されていますね。倒産リスクが低いことは確かですが、それだけでは説明しきれない。薬品セクターの中で業績が安定しないのもその通り。海外投資家比率が高く、社長は2015年からフランス出身のクリストフ・ウェバー氏で『実質外資』と皮肉る人もいます。新NISAで武田薬品工業だけが買われる明確な理由が見つかりません。結局は知名度で買われているだけかもしれません」

製鉄会社は「質」

 3位は日本製鉄。オールドエコノミーの代表銘柄である。

「日本の製鉄会社は、中国企業に量で太刀打ちできないので『質』に活路を求めています。鉄道や高級車など、特に良質な材料が必要な分野では日本製鉄や10位の神戸製鋼所が力をつけています。日本製鉄に限って言えば、米国政府も介入してきたUSスチールを買収するという話題もあり、投資家の関心を集めたようです」

 ランキング表を見渡すと、5位のホンダを筆頭に日産、いすゞ、マツダの名があり、TOYO TIREも自動車関連株だ。

「自動車関連は株価が下がったことで相対的に配当利回りが上がり、物色された感じです。トヨタ自動車のように安定成長期待が強いと株価は底堅く、配当妙味が高まるほど下がらないものです」

 名だたる巨大企業が表に並ぶ中で30位の三ツ星ベルトはやや異色だ。戦前に設立された工業用ベルトメーカーだが、一般消費者にはなじみの薄い銘柄である。

「2024年3月期まで2年連続で純利益の全額を配当に充てると発表した企業です。『もの言う株主』と呼ばれる英国系投資ファンドが大規模な株主還元を求めた影響だと思われます」

 期間限定の「大盤振る舞い」のため、来年同時期のランクインは難しいかもしれない。

 配当として多額のキャッシュを社外に流出させ続けたら、株主から今度は「成長投資はどうしたの?」と突っ込まれる可能性が高い。

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微妙な日産