昨秋、朝日新聞の「声」欄に、ある特別支援学校の教員の投書が掲載された。多くの特別支援学校が修学旅行を請け負う旅行会社を探すことに苦慮しているという。現場の声を聞いた。AERA 2025年1月20日号より。
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物価高騰、インバウンド(訪日外国人客)の増加、バスの運転手や旅行会社の人手不足──。さまざまな原因が絡み合い、国内の公立学校の修学旅行が窮地に追い込まれている。とりわけ厳しい状況にあるのが、特別支援学校だ。予約や手配を調整・サポートする旅行会社がなかなか決まらず、学校現場は困惑している。
「今年度実施した修学旅行では、大手旅行会社3社に見積もりをお願いして2社に断られました。毎年こんな感じです。コロナ禍前から続いています」
と話すのは新潟県の特別支援学校高等部に勤務する40代男性教員だ。
見積もりを依頼したなかで手を挙げたのは1社のみ。ホームページで教育旅行をうたっている大手旅行会社さえ、「そういうのは取り扱っていない」と依頼した電話口で断ってきた。
「上司からは必ず相見積もりを取るように言われるんですが、難しいのが現状です」
断られることが常態化
男性は県内の複数の特別支援学校も同様の悩みを抱えていると知り、「社会に開かれた学びの体験を特別支援学校の生徒にも提供していただきたい」と朝日新聞に投書した。コロナ禍以降、宿泊費やバス代の高騰でさらに厳しさは増している。男性はこれまで通りの修学旅行が継続できるか不安を感じている。
「修学旅行は子どもたちにとって大切なイベントです。でも人数は少ないですし、どうしても特別な配慮をお願いしなくてはならない。きっとそれもネックになっているのかなあと。旅行会社側にもご事情はあるのだと思います。受けていただけない理由を知りたいです」
こうした問題は各地の特別支援学校で起きている。
静岡県の県立特別支援学校に勤務する50代男性教員も、辞退する旅行会社が増えてきたと感じている。
「10年以上前はまだ受けていただける旅行会社はそれなりにあって、断られることが常態化してはいませんでした。でも今は1社しか返事が来ないことや、断りの返事すら来ないことも多々あります」
宿泊施設の設備や交通機関の条件、食事対応など旅行会社に求めることは多い。それでいて予算には限りがあり、参加人数も少ない。男性教員は辞退する旅行会社にも同情する。
「旅行会社としては予算次第ということでしょうが、保護者の負担を考えると増額は難しい問題です。1泊2日だとだいたい1人4万~5万円台の予算ですが、この額で抑えてほしいとなると旅行会社も苦しいはず」