特別な意味を持つ機会

 特別支援学校の修学旅行は特別な意味を持つ。障害が重くなるほど旅行の経験は少なくなることが多い。障害の種類や程度にもよるが、高校を卒業すると友人と旅に出る機会に恵まれない人も少なくない。

 修学旅行は家族にとっても大切な機会だ。千葉県の50代女性は2年前、特別支援学校高等部に通う娘の2泊3日の修学旅行に合わせて母と旅行した。3日間も娘と離れるのは初めてだった。

「貴重な2泊でしたので、母と2人きりで金沢へ旅行に行きました。こういう機会は最初で最後だと思います」

 修学旅行から帰ってきた娘は自信にあふれていてひと回り成長したと感じた。

「家族旅行とは違って、お友だちと過ごす時間は特別だったようです。高等部を卒業してしまうと、なかなか同級生と旅行する機会はありません。特別支援学校の修学旅行は、子どもたちにとっても家族にとっても人生の思い出になります。行事を減らす学校も増えてきていますが、修学旅行だけは絶対になくさないでほしい」と女性は話す。

 修学旅行の予算の見直しや助成の検討などが必要な状況だが、特別支援学校の修学旅行について研究する岐阜聖徳学園大学教育学部の松本和久教授は、まずは周囲の理解が必要だと考える。

「『共生社会だ』『障害のある人を受け入れてともに過ごしましょう』と言うだけではなかなか伝わりません。まずは『障害のある子どもたちの修学旅行が困ったことになっているんだ』という特別支援学校の修学旅行ならではの困難さを多くの人に知ってもらい、応援団を増やしたい。どうしたらいいか一緒に考えてもらうのは、それからだと思います。私たちはリーフレットを作成するなどして具体案を示してきました。それらが一助になれば幸いです」

(ライター・大楽眞衣子)

※リーフレット「特別支援学校の修学旅行を計画する際のポイント」は、岐阜聖徳学園大学特別支援教育専修のホームページ内( https://gifushotokusen.com )からダウンロードできる

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