生徒のため自腹で下見
さらに社員の人手不足問題もあると語るのは別の大手旅行会社の40代女性だ。
「旅行代理店は深刻な人手不足です。コロナ禍で働き盛りの30代が減って、20代前半と40代以上しかいない状況です。だから会社も学校を選んでいて、予算が厳しいところや手間のかかる学校はあえてガツガツ営業にいきません」
こうした状況下、学校側も添乗員やバスを利用しないなど、さまざまな工夫を試みている。そのしわ寄せが、教員の負担となって重くのしかかることも。
知的障害のある生徒が通う九州地方の特別支援学校中学部では、昨年度、添乗員なしで修学旅行を実施した。生徒は10人未満。引率の女性教員が添乗員業務もこなした。前任者から引き継いだ時点で添乗員なしでの計画は決まっていた。「やはり予算の関係だと思います。私が旅程管理を全部やることになり、もう本当につらくてしんどくて。いまだに思い出すと胃が痛くなります」と女性は振り返る。
さらに下見も一部は自腹だった。管理職を説得して日帰りの下見は許されたが、1日で2泊3日の行程は回りきれず、夏休みに自費で現地へ足を運んだ。
「教頭ら管理職は『下見はいらんやろ』と冷ややかでした。費用を節約したいからだと思います。『行けなかった部分は夏休みに家族旅行で行きます』と管理職に伝えたら苦笑いでした。でも、生徒たちが当日動揺しないためには写真や動画を使った事前学習は必須です。添乗員不在なうえ、下見なしというわけにはいきません」
この旅行では予算の都合で大型バスの利用も見送った。生徒全員が歩けるので路線バスや電車、新幹線を使うことに。これが思いがけず大好評だった。
「普段、スクールバスやデイサービスの車での移動が中心で公共交通機関をほとんど利用したことのない生徒たちだったので、すごくいい経験になりました。新幹線も初めての生徒ばかりでとても楽しんでくれました。子どもたちの成長や保護者の喜びも大きくて、大変でしたがやり甲斐を感じました」(女性)