90歳を迎えた今も現役医師として週4日高齢者施設で働いている折茂肇医師。自身の健康の秘訣の一つに「上手に気分転換して嫌なことはすぐ忘れる」があるが、かつて100歳の高齢者に長寿の秘訣を聞いた調査でも「物事にこだわらず、くよくよしない」が1位だった。
【動画】90歳現役の折茂肇医師の回診の様子とインタビューはこちら
折茂医師は、東京大学医学部老年病学教室の元教授で、日本老年医学会理事長を務めていた老年医学の第一人者。自立した高齢者として日々を生き生きと過ごすための一助になればと、自身の経験を交えながら快く老いる方法を紹介した著書『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)を発刊した。同書から一部抜粋してお届けする(第13回)。
* * *
100年、つまり1世紀生きるとは大変なことだ。誰にでもできることではない。超高齢社会の中でも「超エリート」というべき存在だろう。100歳まで生きるためには、本人の努力はもちろん、長寿に関わる遺伝的な素因にも恵まれているのだろうと考える。
私自身も90歳となったが、あと10年生きられるかと聞かれたら、自信を持って「もちろん」とは言えないかもしれない。
実際に長生きした人は、自分が長生きできた理由をどのように考えているのだろうか。
100歳の高齢者に、その「長寿の秘訣」を聞いた調査がある(*)。少し前の調査にはなるが、その自己判断による長寿の秘訣として挙げられた項目のなかで、男女とも最も多かったのが「物事にこだわらず、くよくよしない」ということだった。56・8%、実に半数以上の人がこう答えていた。なんと、これは私が最も得意とすることだ! 私はこれまでの人生で細かいことは気にせず、なるようになるという考えで自由に生きることをモットーとしてきたが、そういう姿勢が長生きにはいちばん良いのだ。
ちなみに、2位は「暴飲暴食をしない」、3位は「幸せな家庭に恵まれている」という結果であった。何事もほどほどにすること、他者との関わりを持つことも、大切であることがうかがえる。