結婚に伴う「朝見の儀」で、天皇、皇后両陛下にあいさつをし、着席する典子さま(現・千家典子さん)。優美なアンシンメトリー(左右非対称)のデザインのティアラに首飾りやイヤリングなど5種の宝飾品と勲章、ローブデコルテの正装で臨まれた=2014年10月、皇居・宮殿「松の間」

 よくみると次女の千家典子さんと、三女の守谷絢子さんのティアラや首飾りも優美なアンシンメトリーのデザインで、久子さまの美意識と造詣の深さが伝わってくる。

「アトリエマイエドール」は、11年に成年を迎えた、小室眞子さんのティアラの製作も手掛けている。このときは、和光がティアラと宝飾品5点の製作を2856万円で受注し、大倉さんの工房が担当することになった。

秋篠宮家は、紀子さまとおふたりの姉妹ともに、デザインのモチーフは百合の花だ。三方とも同じイメージでそろえることを希望されたという。

眞子さんのティアラで活躍した3Dプリンター

「アトリエマイエドール」の工房では、熟練の職人による手作業と同時に、CADソフトや3Dプリンターで出力した樹脂製のティアラのパーツと比較しながら、最高峰のジュエリーを作り上げてゆく=2024年10月、「アトリエマイエドール」(東京都・港区)、上田泰世撮影(写真映像部)

 眞子さんのティアラ製作は、宝飾職人にとっても大きな「転換期」となった。

 それまでの皇室のティアラは、職人による昔ながらの手作業の世界だった。ところが眞子さんのティアラ製作からCADソフトを使い、パソコン上でデザインを構築していった。

「なんといっても画期的だったのは、3Dプリンターの存在です」

 そう話すのは、工房の室長を務める手鹿正博さん(43)。デザインが決まったら3Dプリンターで樹脂製のティアラや宝飾品などのパーツを出力することで、部品を手にデザインを宮家サイドと確認し、試着もできる。

「宝飾品を製作にあたっては、数ミリからミクロン単位で修正をかけていくこともあります。サイズやデザインがイメージと違うとなれば、これまでは金属をいったん溶かすなどして手作業で作り直さなければなりませんでしたが、ソフト上で修正が可能で、劇的に工程が変わりました」

と振り返る手鹿さん。3Dプリンターで製作した眞子さんの宝冠と宝飾品一式の部品は、239個におよんだという。

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